視点

変えるための大きな力

2022/09/14 09:00

週刊BCN 2022年09月12日vol.1938掲載

 新型コロナ禍を機に多くの企業や組織がDXの実現に向けて動いている。業務プロセスを見直したり、ITツールを導入したりと、取り組み方はさまざまだ。ただ、慣例的なやり方を変えるには、大きな力が必要になる。

 河野太郎・デジタル担当相は8月30日の記者会見で、フロッピーディスクなどの記録媒体を指定した行政手続きを撤廃する方針を示し、注目を集めた。現在、フロッピーディスクやCD-ROMなどを指定する規定は約1900条項あるという。

 やり玉に挙げられることが多いフロッピーディスクだけでなく、CD-ROMなど、細かい決まりがあることに驚いた。行政からすると、規定が変われば、システムも、それまでの業務プロセスも、大きく変えなければならない。各省庁では、効率化を歓迎する職員はいるだろうし、慣れたやり方を捨てることなどに抵抗する職員も一定数いるだろう。

 一方、企業の立場から見ると、現状のままでは手続きのために記録媒体を確保しなければならないし、システムを対応させ続けることも求められる。「時代遅れ」とやゆされる旧来型の仕組みから脱却することは、世界の潮流からも妥当といえる。

 デジタル改革について政府は、スピードを最優先に実行することを狙いにしている。行政手続きのデジタル化に加え、クラウドなどの新しい技術の導入・活用を阻害する恐れのある規定を含めて、アナログ規制を一掃する考えだ。実現すれば、官民の働き方は大きく変わるだろうと期待している。

 現在、企業の間では、DXの実現に向けてIT投資はおおむね堅調に推移している。しかし、IT業界内を取材していると、DXに向けて着実に取り組みを進めている企業がある一方、新たにITの製品やサービスを導入したものの、十分に使いこなせず、想定していた効果が出ていない企業もあるとの声が聞こえる。

 製品やサービスを導入すれば、一足飛びにDXが実現できるわけではないのは明らかだ。慣れ親しんだやり方を変えていくためには、決まり事や人の意識も変えていく必要がある。場合によっては組織内で衝突が起こるかもしれないが、やらなければ何も変わらない。将来のためにも、今こそ大きな力をかけるときではないだろうか。

 
週刊BCN 編集長 齋藤 秀平
齋藤 秀平(さいとう しゅうへい)
 1984年4月生まれ。山梨県甲州市出身。2007年3月に三重大学生物資源学部共生環境学科を卒業。同年4月に伊勢新聞社(津市)に入社し、行政や警察、司法などの取材を担当。16年4月にBCNに入社。リテール業界向け媒体の記者を経て、17年1月から週刊BCN編集部に。上海支局長を務め、22年1月から現職。旧姓は廣瀬。
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