多くの企業で何らかのクラウドサービスが採用されており、クラウドサービスの利用は当たり前の時代となったといえる。日本クラウド産業協会(ASPIC)は、1999年にASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパンとして創立し、クラウドサービスという言葉が普及する前からさまざまな活動を展開し、企業が安全にクラウドサービスを利用できる環境づくりに尽力してきた。同協会の執行役員を務める高橋伸之・事務局長にこれまでの取り組みを聞いた。(岩田晃久)
認定機関として信頼性向上を図る
――ASPICについて教えてください。
当協会は1999年にASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパンとして創立され、2022年4月から現在の日本クラウド産業協会の名称で活動しています。創立時から「ASP・SaaS・クラウドの普及促進と市場拡大」「安心安全なクラウドサービスの推進」を2大目標として、業界の発展に取り組んできました。現在は、AI・IoT分野での事業支援も行っています。
――どのような活動をされていますか。
総務省と連携して、セキュリティーガイドラインや情報開示指針などを作成しています。また、クラウドサービス情報開示認定機構として、クラウドサービスを提供する事業者に向けて情報開示の推進に取り組んでいます。サービスの機能だけでなく、例えば、「解約する際には何カ月前までに申し込みが必要」などの情報をユーザー企業に対してきちんと公開してもらうようにするもので、要件を満たしている事業者を認定しています。これらの取り組みにより、安心安全なクラウドサービスの推進を目指しています。
そのほかにも、クラウドサービスの紹介サイト「アスピック」の運営や、さまざまなテーマを研究する「クラウド研究会」、アワードの開催といった会員のビジネス拡大に向けた支援、さらに25年度からは新規事業を開始しました。
――民間にもクラウドサービス比較サイトがありますが、アスピックの特徴を教えてください。
アスピックは利用が無料で、サービス登録している企業から登録料を支払ってもらう仕組みで運用しており、1313のサービスが登録されています(25年10月時点)。広告を募集していないため、中立的なサイトと言えます。そのため、官公庁が導入するクラウドサービスを検討する際には、アスピックを参考にするようにガイドラインで示されています。
高橋伸之 執行役員
新規事業で「ASPICクラウドサービス検定」開始
――新規事業ではどのようなことを行うのでしょうか。
11月から「ASPICクラウドサービス検定」を開始しました。クラウドの基礎から最新動向までを体系的に学び、スキルとして証明できるオンライン検定となっており、合格者は就職活動や社内アピールといった場面で活用いただけます。
また、個人情報保護に関する研修の実施を予定しており、まずは介護業界に向けて行う準備をしています。社団法人では個々の企業に対応するのが難しいため、新たに会社を設立して企業が抱える課題を解決できる体制づくりも進めています。
会員同士の深い交流を実現
――会員企業にはどのような支援をされていますか。
通常の法人会員に加えて、アスピックにサービス登録している企業も会員としているので、現状の会員数は約1400となっています。以前は、会員交流会や情報交換会を大規模に行っていましたが、名刺交換だけ、といったように深い話にならないケースが多くありました。そのため現在は、毎月小規模な交流会を開き、参加企業にプレゼンをしてもらったり、質問をし合ったりするなど深い交流ができるようにしています。
そのほかにもメルマガを通じた情報提供や、採用や人材育成に関するイベントの開催なども行っています。情報提供では、クラウドサービスだけでなく、セキュリティーやAI、官公庁の調達情報などを発信しています。
業界が一致団結することで、さまざまな活動を推進していくことができます。当協会が、みんなで取り組んでいこうという機運を高められる施策を実施していくのが重要だと感じています。
――今後の展望をお願いします。
会員のカテゴリーの中に「ユーザー会員」を設けているので、ユーザーの動向などクラウドサービスに関する基礎情報のようなものを世の中に発信できればと思っています。そのためにも、当協会の認知度を上げて、会員規模を拡大していくことが重要ですので、そういった部分の取り組みも強化していきます。
そして、業界として取り組まなければならないのが人材育成であるため、この部分はこれまで以上に力を入れて活動を進めたいです。
<紹介>
【日本クラウド産業協会】
1999年にASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパンとして創設。2022年4月、日本クラウド産業協会に名称を変更。クラウドサービスの普及促進や市場の創造を目的に、ガイドラインの作成や会員企業の支援など幅広い活動を展開。