Special Feature
【大手SIerの上期決算】国内IT好調、円安は総じて追い風に 欧米インフレ・国内コスト増が懸念
2022/11/28 09:00
週刊BCN 2022年11月28日vol.1947掲載
大手SIerの2022年度上期(22年4~9月期)決算は、旺盛なIT投資に支えられるかたちで軒並み好業績を記録した。国内ITビジネスが好調であることに加え、海外売上高比率が高いNTTデータと野村総合研究所は円安効果によって海外業績が押し上げられた。TISは上期として過去最高の営業利益率を叩き出すとともに通期業績を上方修正。中期経営計画で掲げた目標を1年前倒しで達成できる可能性が出てきた。一方で、欧米を中心とする人件費高騰や過度なインフレ、国内データセンターなどに使う電気料金の値上げが懸念材料として挙がった。
(取材・文/安藤章司)
グループ再編で年商3.6兆円へ
NTTデータの上期連結売上高は前年同期比13.1%増の1兆3714億円で、すべての事業セグメントで増収となったものの、営業利益は公共分野での不採算案件や先行投資の増加で同1.1%減の1079億円の微減となった。不採算案件については、システム基盤をオンプレミスからパブリッククラウドに移し替えるに当たり、当初見込んでいた処理性能が出ずに稼働が遅れたことが主な要因で、約70億円の損失が生じたという。先行投資では上期約100億円をクラウドやデータ分析、AIなど先進的な技術を高める分野に投じている。
NTTデータ 本間 洋 社長
上期は急激な円安、世界的な物価高、人件費高騰が巻き起こったものの、「先進的なデジタル技術を駆使して、新しいサービスや商品、ビジネスモデルをつくる需要は世界的に見て根強いものがある」(本間洋社長)と、世界のIT市場動向はおおむね堅調であることに加え、円安になって円換算での海外売上高の押し上げ効果があったことから、業績全体で見るとプラスに働いた。
円安は海外ベンダーから仕入れているIT機器やクラウドサービスの価格を押し上げ、NTTデータの利益圧迫や顧客の需要減退を引き起こしかねないが、上期に限っては「国内ビジネスに対する影響は限定的」と本間社長は話す。その一方で、欧米を中心に「海外の人件費の高騰のほうが影響が大きい」と指摘した。
NTTデータは、10月1日付で旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収め、下期から連結対象に加えた。22年3月期実績の単純合算ベースで見ると、NTTデータの連結売上高はNTTリミテッドが加わることで2兆5500億円から約3兆6000億円に増え、従業員数は世界全体で約19万人、海外売上高比率は60%程度に高まる見込みだ。
上期は円安に加え、欧州でのビジネスが堅調に推移したことなどから海外事業セグメント売上高は前年同期比26.6%増、営業利益は同60.1%増となった。競争が激しい北米市場では、ITコンサルティングや尖ったデジタル技術を持つ事業会社を相次いで買収し、「当社が強みとしているオファリング(ITソリューション商材)を補強していく」(同)と競争力の向上に取り組む。
こうした取り組みにより、25年度に連結売上高4兆円、営業利益率10%を目標に据える。
北米事業拡大にアクセル踏む
野村総合研究所(NRI)の上期連結売上高は北米での連結子会社が増えたことなどから前年同期比16.1%増の3390億円の大幅増となった。国内事業や主要な海外進出先であるオーストラリアでの事業が好調に推移するとともに、新しくNRIグループに迎え入れた米Core BTS(コアBTS)の売り上げに相当する160億円が加わったことが増収要因となった。コアBTS買収に伴う償却費がかさみ、利益面での貢献度は少ないことから上期営業利益は同2.5%増の552億円にとどまった。
コアBTSの参画で上期の北米での売上高は前年同期比約6.5倍の191億円となり、上期の海外売上高の合計額は同88.3%増の629億円、NRIの連結売上高全体に占める割合は18.6%まで拡大している。
国内事業については堅調に推移したことから、コスト増はあったものの、前年同期比37億円プラスの505億円の営業利益を確保した。
上期売上高は期初予想より190億円上振れしたため、通期(23年3月期)売上高見通しを200億円上乗せして6900億円に上方修正した。想定為替レートは期初見込みのまま据え置いているため、仮に今の円安状況が継続するとすれば、今回の上方修正分とは別に100億円弱の上振れも想定されるという。営業利益の見通しは海外の人件費や電気代の高騰などコスト増の要因が想定されるため、期初予想のまま据え置いた。
野村総合研究所 此本臣吾 会長兼社長
NRIでは、22年度に海外売上高1000億円を目標に掲げており、主力のオーストラリアの事業を引き続き伸ばすとともに、「北米での追加のM&Aを加速させる」と此本臣吾・会長兼社長は話す。今はコアBTSを軸に米北東部を中心とした地場企業向けITビジネスが中心だが、今後は中部・南部地域への進出を視野に追加のM&A候補を検討するとともに、北米子会社間のクロスセルを推進。南米のニアショア開発拠点の獲得も視野にいれることで目標に迫る考え。中計目標を1年前倒しで達成視野
TISの上期連結売上高は前年同期比4.7%増の2453億円、営業利益は同16.1%増の277億円と大きく伸びた。下期偏重の傾向が強いSI業界にあって、営業利益率は上期として過去最高の11.3%を記録した。好調な上期業績を踏まえて通期業績の見通しを売上高は前年度比4.7%増の5050億円、営業利益は同590億円へと上方修正した。TISは24年3月期までの3カ年中期経営計画で売上高5000億円、営業利益580億円を目標に掲げているが、1年前倒しで達成できる可能性が出てきた。
主要事業セグメントの強みの商材を軸としたオファリングサービス、金融や産業向けのITビジネスが軒並み好調だったことが業績全体を押し上げた。地域向けの広域ITソリューション事業セグメントは昨年度に子会社の中央システムを売却した影響で、売上高が前年同期比1.6%の減収となったが、営業利益は16.9%の増益となり、利益率の押し上げに貢献している。
TIS 岡本安史 社長
オファリングサービスや金融ITビジネスでは、TISの強みである決済関連の案件が好調だった。非金融業の分野で決済サービスなどの金融サービスを埋め込んで提供する「エンベデッド・ファイナンス」や「給与のデジタル支払い解禁」といった「新しいトピックが増えているため、こうした市場の変化をビジネスチャンスと捉え、新しい市場創出につなげていく」と、岡本安史社長は話す。
海外事業ではタイ子会社が年平均2割近く売り上げを伸ばしているとともに、ASEANでの業務提携や強みの決済サービスを生かして事業拡大に取り組む。
主力オファリングサービスで決済基盤サービスの「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」関連の売上高、中計最終年度の売上高340億円の達成に向けてほぼ計画通りに進捗。PAYCIERGE事業は、同サービス導入の際に発生するシステム構築(SI)と、サービスの利用料の大きく二つに分けられ、22年3月期はSI比率が7割、継続的に収益が期待できるリカーリングサービス比率が3割の構成比だったが、中計最終年度にはSIとリカーリングの比率を半々に持っていく目標を掲げている。
NTTグループは国内で多数のDCや通信設備を運営しているが、電気代の負担増が「年間を通じて(前年度比で)600億円程度増える見通し」(NTTの島田明社長)を示した。期初は300億円増を見込んでいたが、倍増する見込みだという。
NRIも円安によって「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などパブリッククラウドの仕入れコストが上昇するとともに、中国オフショア開発拠点への発注額も円換算で増加。また、国内データセンターなどに使う電気代の高騰でトータルで約20億円の利益押し下げが発生している。
TISは円安の業績に与える影響は限定的としながらも、「より付加価値の高い提案に努める」(河村正和執行役員)ことで、パブリッククラウドなど海外商材の価格上昇分を吸収する考えを示している。
現時点では円安はやや落ち着きをみせているが、今後の動向は不透明なままだ。電気代に関しては、さらなる値上げも見込まれる。動向次第では、航空運賃に加算される「燃油サーチャージ」のように、サービスの本体価格とは別建てで、クラウド利用料や電気代の一部を顧客にも負担してもらう方式を検討するベンダーが現れることも考えられるだろう。
(取材・文/安藤章司)

グループ再編で年商3.6兆円へ
NTTデータ
NTTデータの上期連結売上高は前年同期比13.1%増の1兆3714億円で、すべての事業セグメントで増収となったものの、営業利益は公共分野での不採算案件や先行投資の増加で同1.1%減の1079億円の微減となった。不採算案件については、システム基盤をオンプレミスからパブリッククラウドに移し替えるに当たり、当初見込んでいた処理性能が出ずに稼働が遅れたことが主な要因で、約70億円の損失が生じたという。先行投資では上期約100億円をクラウドやデータ分析、AIなど先進的な技術を高める分野に投じている。
上期は急激な円安、世界的な物価高、人件費高騰が巻き起こったものの、「先進的なデジタル技術を駆使して、新しいサービスや商品、ビジネスモデルをつくる需要は世界的に見て根強いものがある」(本間洋社長)と、世界のIT市場動向はおおむね堅調であることに加え、円安になって円換算での海外売上高の押し上げ効果があったことから、業績全体で見るとプラスに働いた。
円安は海外ベンダーから仕入れているIT機器やクラウドサービスの価格を押し上げ、NTTデータの利益圧迫や顧客の需要減退を引き起こしかねないが、上期に限っては「国内ビジネスに対する影響は限定的」と本間社長は話す。その一方で、欧米を中心に「海外の人件費の高騰のほうが影響が大きい」と指摘した。
NTTデータは、10月1日付で旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収め、下期から連結対象に加えた。22年3月期実績の単純合算ベースで見ると、NTTデータの連結売上高はNTTリミテッドが加わることで2兆5500億円から約3兆6000億円に増え、従業員数は世界全体で約19万人、海外売上高比率は60%程度に高まる見込みだ。
上期は円安に加え、欧州でのビジネスが堅調に推移したことなどから海外事業セグメント売上高は前年同期比26.6%増、営業利益は同60.1%増となった。競争が激しい北米市場では、ITコンサルティングや尖ったデジタル技術を持つ事業会社を相次いで買収し、「当社が強みとしているオファリング(ITソリューション商材)を補強していく」(同)と競争力の向上に取り組む。
こうした取り組みにより、25年度に連結売上高4兆円、営業利益率10%を目標に据える。
北米事業拡大にアクセル踏む
野村総合研究所
野村総合研究所(NRI)の上期連結売上高は北米での連結子会社が増えたことなどから前年同期比16.1%増の3390億円の大幅増となった。国内事業や主要な海外進出先であるオーストラリアでの事業が好調に推移するとともに、新しくNRIグループに迎え入れた米Core BTS(コアBTS)の売り上げに相当する160億円が加わったことが増収要因となった。コアBTS買収に伴う償却費がかさみ、利益面での貢献度は少ないことから上期営業利益は同2.5%増の552億円にとどまった。コアBTSの参画で上期の北米での売上高は前年同期比約6.5倍の191億円となり、上期の海外売上高の合計額は同88.3%増の629億円、NRIの連結売上高全体に占める割合は18.6%まで拡大している。
国内事業については堅調に推移したことから、コスト増はあったものの、前年同期比37億円プラスの505億円の営業利益を確保した。
上期売上高は期初予想より190億円上振れしたため、通期(23年3月期)売上高見通しを200億円上乗せして6900億円に上方修正した。想定為替レートは期初見込みのまま据え置いているため、仮に今の円安状況が継続するとすれば、今回の上方修正分とは別に100億円弱の上振れも想定されるという。営業利益の見通しは海外の人件費や電気代の高騰などコスト増の要因が想定されるため、期初予想のまま据え置いた。
NRIでは、22年度に海外売上高1000億円を目標に掲げており、主力のオーストラリアの事業を引き続き伸ばすとともに、「北米での追加のM&Aを加速させる」と此本臣吾・会長兼社長は話す。今はコアBTSを軸に米北東部を中心とした地場企業向けITビジネスが中心だが、今後は中部・南部地域への進出を視野に追加のM&A候補を検討するとともに、北米子会社間のクロスセルを推進。南米のニアショア開発拠点の獲得も視野にいれることで目標に迫る考え。
中計目標を1年前倒しで達成視野
TIS
TISの上期連結売上高は前年同期比4.7%増の2453億円、営業利益は同16.1%増の277億円と大きく伸びた。下期偏重の傾向が強いSI業界にあって、営業利益率は上期として過去最高の11.3%を記録した。好調な上期業績を踏まえて通期業績の見通しを売上高は前年度比4.7%増の5050億円、営業利益は同590億円へと上方修正した。TISは24年3月期までの3カ年中期経営計画で売上高5000億円、営業利益580億円を目標に掲げているが、1年前倒しで達成できる可能性が出てきた。主要事業セグメントの強みの商材を軸としたオファリングサービス、金融や産業向けのITビジネスが軒並み好調だったことが業績全体を押し上げた。地域向けの広域ITソリューション事業セグメントは昨年度に子会社の中央システムを売却した影響で、売上高が前年同期比1.6%の減収となったが、営業利益は16.9%の増益となり、利益率の押し上げに貢献している。
オファリングサービスや金融ITビジネスでは、TISの強みである決済関連の案件が好調だった。非金融業の分野で決済サービスなどの金融サービスを埋め込んで提供する「エンベデッド・ファイナンス」や「給与のデジタル支払い解禁」といった「新しいトピックが増えているため、こうした市場の変化をビジネスチャンスと捉え、新しい市場創出につなげていく」と、岡本安史社長は話す。
海外事業ではタイ子会社が年平均2割近く売り上げを伸ばしているとともに、ASEANでの業務提携や強みの決済サービスを生かして事業拡大に取り組む。
主力オファリングサービスで決済基盤サービスの「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」関連の売上高、中計最終年度の売上高340億円の達成に向けてほぼ計画通りに進捗。PAYCIERGE事業は、同サービス導入の際に発生するシステム構築(SI)と、サービスの利用料の大きく二つに分けられ、22年3月期はSI比率が7割、継続的に収益が期待できるリカーリングサービス比率が3割の構成比だったが、中計最終年度にはSIとリカーリングの比率を半々に持っていく目標を掲げている。
為替や電気代の変動にどう対処するか
急激な円安によって海外ベンダーから仕入れているパブリッククラウドのサービス価格が上昇したり、電気代高騰でデータセンター(DC)運用費用が増加したりしている。クラウド利用料やDC電気代を顧客向けサービス費用に含めて提供している場合は、契約更新のタイミングで状況によっては、顧客と交渉した上でコスト上昇分をある程度負担してもらうよう変更するケースが増える可能性もある。NTTグループは国内で多数のDCや通信設備を運営しているが、電気代の負担増が「年間を通じて(前年度比で)600億円程度増える見通し」(NTTの島田明社長)を示した。期初は300億円増を見込んでいたが、倍増する見込みだという。
NRIも円安によって「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などパブリッククラウドの仕入れコストが上昇するとともに、中国オフショア開発拠点への発注額も円換算で増加。また、国内データセンターなどに使う電気代の高騰でトータルで約20億円の利益押し下げが発生している。
TISは円安の業績に与える影響は限定的としながらも、「より付加価値の高い提案に努める」(河村正和執行役員)ことで、パブリッククラウドなど海外商材の価格上昇分を吸収する考えを示している。
現時点では円安はやや落ち着きをみせているが、今後の動向は不透明なままだ。電気代に関しては、さらなる値上げも見込まれる。動向次第では、航空運賃に加算される「燃油サーチャージ」のように、サービスの本体価格とは別建てで、クラウド利用料や電気代の一部を顧客にも負担してもらう方式を検討するベンダーが現れることも考えられるだろう。
大手SIerの2022年度上期(22年4~9月期)決算は、旺盛なIT投資に支えられるかたちで軒並み好業績を記録した。国内ITビジネスが好調であることに加え、海外売上高比率が高いNTTデータと野村総合研究所は円安効果によって海外業績が押し上げられた。TISは上期として過去最高の営業利益率を叩き出すとともに通期業績を上方修正。中期経営計画で掲げた目標を1年前倒しで達成できる可能性が出てきた。一方で、欧米を中心とする人件費高騰や過度なインフレ、国内データセンターなどに使う電気料金の値上げが懸念材料として挙がった。
(取材・文/安藤章司)
グループ再編で年商3.6兆円へ
NTTデータの上期連結売上高は前年同期比13.1%増の1兆3714億円で、すべての事業セグメントで増収となったものの、営業利益は公共分野での不採算案件や先行投資の増加で同1.1%減の1079億円の微減となった。不採算案件については、システム基盤をオンプレミスからパブリッククラウドに移し替えるに当たり、当初見込んでいた処理性能が出ずに稼働が遅れたことが主な要因で、約70億円の損失が生じたという。先行投資では上期約100億円をクラウドやデータ分析、AIなど先進的な技術を高める分野に投じている。
NTTデータ 本間 洋 社長
上期は急激な円安、世界的な物価高、人件費高騰が巻き起こったものの、「先進的なデジタル技術を駆使して、新しいサービスや商品、ビジネスモデルをつくる需要は世界的に見て根強いものがある」(本間洋社長)と、世界のIT市場動向はおおむね堅調であることに加え、円安になって円換算での海外売上高の押し上げ効果があったことから、業績全体で見るとプラスに働いた。
円安は海外ベンダーから仕入れているIT機器やクラウドサービスの価格を押し上げ、NTTデータの利益圧迫や顧客の需要減退を引き起こしかねないが、上期に限っては「国内ビジネスに対する影響は限定的」と本間社長は話す。その一方で、欧米を中心に「海外の人件費の高騰のほうが影響が大きい」と指摘した。
NTTデータは、10月1日付で旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収め、下期から連結対象に加えた。22年3月期実績の単純合算ベースで見ると、NTTデータの連結売上高はNTTリミテッドが加わることで2兆5500億円から約3兆6000億円に増え、従業員数は世界全体で約19万人、海外売上高比率は60%程度に高まる見込みだ。
上期は円安に加え、欧州でのビジネスが堅調に推移したことなどから海外事業セグメント売上高は前年同期比26.6%増、営業利益は同60.1%増となった。競争が激しい北米市場では、ITコンサルティングや尖ったデジタル技術を持つ事業会社を相次いで買収し、「当社が強みとしているオファリング(ITソリューション商材)を補強していく」(同)と競争力の向上に取り組む。
こうした取り組みにより、25年度に連結売上高4兆円、営業利益率10%を目標に据える。
(取材・文/安藤章司)

グループ再編で年商3.6兆円へ
NTTデータ
NTTデータの上期連結売上高は前年同期比13.1%増の1兆3714億円で、すべての事業セグメントで増収となったものの、営業利益は公共分野での不採算案件や先行投資の増加で同1.1%減の1079億円の微減となった。不採算案件については、システム基盤をオンプレミスからパブリッククラウドに移し替えるに当たり、当初見込んでいた処理性能が出ずに稼働が遅れたことが主な要因で、約70億円の損失が生じたという。先行投資では上期約100億円をクラウドやデータ分析、AIなど先進的な技術を高める分野に投じている。
上期は急激な円安、世界的な物価高、人件費高騰が巻き起こったものの、「先進的なデジタル技術を駆使して、新しいサービスや商品、ビジネスモデルをつくる需要は世界的に見て根強いものがある」(本間洋社長)と、世界のIT市場動向はおおむね堅調であることに加え、円安になって円換算での海外売上高の押し上げ効果があったことから、業績全体で見るとプラスに働いた。
円安は海外ベンダーから仕入れているIT機器やクラウドサービスの価格を押し上げ、NTTデータの利益圧迫や顧客の需要減退を引き起こしかねないが、上期に限っては「国内ビジネスに対する影響は限定的」と本間社長は話す。その一方で、欧米を中心に「海外の人件費の高騰のほうが影響が大きい」と指摘した。
NTTデータは、10月1日付で旧ディメンションデータとNTTコミュニケーションズの海外事業などを統合したNTTリミテッド(本社は英国)を傘下に収め、下期から連結対象に加えた。22年3月期実績の単純合算ベースで見ると、NTTデータの連結売上高はNTTリミテッドが加わることで2兆5500億円から約3兆6000億円に増え、従業員数は世界全体で約19万人、海外売上高比率は60%程度に高まる見込みだ。
上期は円安に加え、欧州でのビジネスが堅調に推移したことなどから海外事業セグメント売上高は前年同期比26.6%増、営業利益は同60.1%増となった。競争が激しい北米市場では、ITコンサルティングや尖ったデジタル技術を持つ事業会社を相次いで買収し、「当社が強みとしているオファリング(ITソリューション商材)を補強していく」(同)と競争力の向上に取り組む。
こうした取り組みにより、25年度に連結売上高4兆円、営業利益率10%を目標に据える。
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