広東省東莞市は、台湾の電子産業のビジネスモデルをそのまま短期間に中国大陸に移植したケースと言える。

 東莞は地理的に、その地域の中心である深センから車で1時間以内にあり、人件費や土地も深センに比べ安い。そして、開発に当たって地元行政の積極的支援が得られた。台湾にあてはめると、台北市から1時間以内にある、台北縣や桃園縣の工業団地の発展軌跡に共通するものがある。

 1970年代に米国のGI社が投資したIC工場のある新店に続き、台北市近郊の台北縣のあちらこちらに同様の団地ができた。五股、南港、中和などである。

 いわゆる、コンピュータハードウェアの一大産業がここに生まれたわけである。板金加工、金型加工、射出成形、塗装、基板工場などの工場は、電子産業の発展を陰で支える主要なインフラ産業であるが、これもまた、台北市から1時間以内のエリアに集中する。

 中国でこのような分業体制など、まだまだ時間がかかると思っていたが、思いのほか短期間で育ってしまった。

 なぜなら、この5年間ほどで、大多数の台湾メーカーが民族大移動のごとく、東莞を含む広東省の珠江デルタ地区に移転してしまったからである。

 結局のところ、中国の電子産業が急速に発展し、世界のコンピュータ工場になったといっても、実際は台湾企業が運営しているわけで、資本、マネジメント、OEM/ODMビジネスモデルはすべて台湾企業からのものだ。

 中国が提供しているのは、格安で尽きることのない労働力、安い土地、(上手く立ち回れば)安い税金、安いエンタテインメントといったところだ。

 最近は聯想(Legend)のように、販売力では年間2千万台にせまるパソコンを製造している大陸のメーカーも現れたが、ここへ主要部品を納入している協力工場は台湾系の現地メーカーが大半である。(広東省東莞市発)