北斗七星

北斗七星 2002年9月2日付 Vol.955

2002/09/02 15:38

週刊BCN 2002年09月02日vol.955掲載

 

▼「ITの導入で省力化が進み、雇用機会が失われる」という意見がある。失業者の増加が大きな問題となっているなか、ITの活用が雇用機会を生むどころか、減らす原因になっているのではないかと指摘されることが多い。特にITバブル崩壊後は、ITは日本経済を再生する原動力どころか、不況の元凶とする意見も目立つ。

▼しかし、日本の将来を考えると、ITが及ぼすのはマイナス面ばかりではない。今後、日本は高齢化が進み、労働力となる若年層の比率が減少していく。それを解決するためには高齢者でも労働力となり得る仕組みを、ITを活用することで実現できないだろうか。日本は資源が少ない。むやみに人口増を目指すよりも、少ない人口で高いGDP(国内総生産)をあげる体制を目指すほうが妥当なように思うのだが。

▼現状のITは高齢者に使いやすいものではない。だが、今後の技術進展などにより高齢者が使いやすいものへと変えていくことは十分に可能だ。働きたいと考える高齢者が、いつまでも働くことができる仕組みをITで実現すれば、少しはITの面目躍如になる。日本は世界でもトップレベルの長寿国である。現在の定年である60歳の人を見ても、現役を引退するのが適当とは思えないほど元気だ。うまくITを活用することで、現在の定年を引き上げることは不可能でない。決してITが仕事を奪うためのものではないということを、業界全体で示すことはできないだろうか。
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