AI需要の急速な高まりが従来のエンタープライズ向けハードウェアの生産体制を圧迫し、供給不足を招いている。機器調達の目処が立たないなか、IT機器の持続可能な保守運用を支える選択肢の一つとして、メーカーに依存しない独立系の「第三者保守」が注目されている。市場動向をデータライブの営業本部 本部長 木澤 超氏に聞いた。
深刻化するハードウェア供給不足、オンプレ環境を直撃
世界中の注目がAIに集まる一方で、従来からのオンプレ環境は厳しい局面を迎えている。各メーカーはAIサーバー向け高帯域幅メモリ(HBM)に生産力を集中させており、その反動でエンタープライズ向けメモリの供給が極端に絞られているからだ。すでに2026年分の生産枠を完売したメーカーもあり、わずか1週間で価格が1割上昇したケースも出ている。今後もさらなる高騰が予想される。
現場では「見積の有効期限が1週間に短縮された」「発注後に金額が変わる」「納期の目処が立たない」といった声が相次ぐ。必要な機器が入手できなければ、業務やプロジェクトの遂行に深刻な影響が及びかねない。SIerにとっては、調達価格の急変や納期遅延が案件採算や顧客対応に直結する。もちろんクラウドへの移行という選択肢もあるが、クラウドを選べない事情を抱えていたり、移行が完了するまでの運用を支える機器が必要だったりするケースも少なくない。必要な時に必要な機器・部品を調達できないリスクが高まるなか、「備え」としての備蓄の重要性にも目が向けられ始めている。
メモリ不足に悩む企業/SIerからの問い合わせが倍増
メーカーの保守サービス終了(EOSL)後にも機器を使い続けたいという需要が高まるなか、メーカー以外の第三者が部品を調達し修理や障害対応を行う「第三者保守」はEOSL後もIT機器を継続利用するための手段として検討が広がっている。木澤氏は「直近では企業やSIerからの問い合わせが前年同月比で大きく増加した」と反響の大きさを明かす。
営業本部 本部長
木澤 超氏
同社は国内における第三者保守の先駆者的な存在で、ストレージ・ネットワーク・サーバーの各機器など幅広いIT機器にマルチベンダー保守を提供している。NEC、富士通、日立といった国産メーカーから、デル・テクノロジーズ、HPE、Cisco、IBM/Lenovoなどのグローバルメーカーまで主要各社を網羅して対応し、複数メーカーが混在する環境でも窓口を一本化できる。
国内最大の備蓄体制と在庫の透明性で安心を提供
第三者保守を検討する企業やSIerにとって最大の不安は、「必要な時に本当に部品を確保できるのか」という点だ。データライブはその課題に対し、長年にわたって備蓄体制を構築してきた。
2024年に拡大移転した備蓄倉庫「KSC GRANDOCK」の面積は1万㎡を超え、あらゆる世代の機器・部品を蓄えている。案件の有無にかかわらず、顧客から買い取った機器や、市場から調達した部品の検査を行い、備蓄。対応機種数は1万3000を超え、パーツ備蓄は40万個超(2026年6月現在)に達した。利用者から引き揚げた記録媒体機器のデータ消去や物理破壊も行うため、倉庫は厳重なセキュリティで守られている。
また、備蓄されている部品在庫状況は、同社が自社開発で提供するサービスプラットフォーム「smart3pm」を通じて公開している。契約状況とその部品準備状況を顧客がいつでも確認できる。
ITインフラの第三者保守は、主に3つの場面で活用される。1つ目はシステム更改やクラウド移行が完了するまでの期間における延長保守。2つ目はEOSL後も安定稼働しているシステムの継続利用。そして3つ目は、メーカーごとに契約条件や保守期間が異なるなかでの、第三者保守への集約による保守業務の簡素化・一元化だ。同社が提供する保守サービスでは、顧客の状況に合わせて、新品調達やクラウド移行までの暫定的な利用も想定し、契約期間を柔軟に調整できる点も評価されている。
第三者保守は「消極的な継続利用」から「戦略的な投資の再配分」へ
木澤氏は「当初は“やむを得ず”第三者保守を選んだユーザーも、データライブの品質、備蓄量、管理体制に納得し、“これなら安心して任せられる”と継続利用するケースが増えている。第三者保守は消極的な継続利用ではなく、戦略的な選択肢となり得る」と語る。EOSL後の品質や在庫への不安が解消されれば、コスト削減で生まれた余力を、本当に必要なDXやAI、セキュリティへの投資に回せるようになるだろう。深刻化するSE人材の不足を背景に、優先度の低いシステムの保守を任せ、限られた人材を重点領域に充てる動きもある。
これまでの同社の実績は全国2700社、15万台超。近年はリユースを軸とした循環型の取り組みとして評価する見方も広がる。市場環境の激しい変化のなかで、第三者保守という選択肢の価値が見直され始めている。企業が主体的にIT投資を設計するための手段であると同時に、SIerにとっても、顧客のITライフサイクルを支える有効な提案手段として、今後さらに注目を集めそうだ。