Letters from the World

米自治体のIT化

2002/11/11 15:37

週刊BCN 2002年11月11日vol.965掲載

 最近なぜか地方自治体などからの調査依頼や問い合わせがやたらと多い。「今後行政としてITに取り組む為に、米国での事例やヒントが欲しい」というのが大半だ。同様の依頼はこれまでもあったが、なぜか最近はこれまでになく広範囲で流行っているようで、とくに地方や中小都市からの打診はその内容が非常に多岐にわたっている。どこまで本気かはともかく、いずれにせよかなりの優先課題であることは確かな様子である。

 ともすれば大上段に構えがちな日本のお役所と違い、米国行政のIT導入は千差万別だ。工場誘致が盛んなある州では、民間との提携で大規模な調達システムを構築しているし、中西部の風光明媚な山岳の街では、地域のフィッシング・ライセンス発券のみを最初のステップとしている。日本独特の「横並び」主義がないため、行政ごとに取り組みに大きな差が出て、こうした状況が生まれるのだろう。

 実は、行政のIT導入における一番の悩みは、その成果が理解されにくいということに尽きるのではないだろうか。販売や検索などの分かりやすいサービスであれば、オンラインでの成功も理解できなくはないし、実際成功例も多数目にする。しかし役所に行かねばならない時というのは、そのほとんどが「しょうがなく」ではないだろうか。できれば行かずに済ませたい」が行政のサービスを受ける人達の本音だろうから、IT化が成功してもその評価が辛口であるのはしかたあるまい。

 商売の仕組みが明快なオンラインショップでさえ、その業績の向上には四苦八苦している。であれば、今後参入してくる、ましてやそれでなくてもそのサービスの内容が理解されにくい行政が、IT導入で成果を上げるのは、一層困難であることはいうまでもない。更にこれから遅ればせながら始まる日本の行政のIT化は、一層厳しいことが容易に想像できる。またまた税金の無駄使いに終わらねば良いがと心配しつつ、各担当氏には同情の念を禁じ得ない。

(ニューヨーク発)
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