北斗七星

北斗七星 2003年5月19日付 Vol.990

2003/05/19 15:38

週刊BCN 2003年05月19日vol.990掲載

▼2000年初春、東京・日本橋のソフトバンクに風雲急を告げる事態が起きた。ある週末の金曜日、前触れもなくグループ企業の社員が各社数人ずつ招集され、「来週からグループ内の新会社に異動してもらう」との旨を突然打診されたのである。招集された100人余りの当事者でも、新会社の業態を知るのは数日後。徹底した箝口令が敷かれた。ADSLの普及で日本の「ブロードバンド革命」を演出中のソフトバンクBB、その誕生の瞬間である。電光石火、「巧遅は拙速に如かず」だ。

▼さすがに、ここ2年間は先行投資が業績を圧迫、赤字が続いた。03年度(04年3月期)は「黒字化に向かう」(孫正義社長)と予測するが、この「拙速」が吉と出るか凶と出るか、正念場だ。日本の企業では、こうした行動が歓迎されないきらいがある。しかし、「勝ち組」企業の多くは、名経営者の勇気ある「決断」があって、後の発展につながった例は数多い。日本で世界トップのブロードバンド網を構築できた「立役者」であるソフトバンクに対して相変わらず冷ややかな論調は目立つが、一時、見守る目をもちたいものだ。

▼ここ数日、重症急性呼吸器症候群(SARS)に関し、ゲノム解析を担うグリッドが対策に一役買う場面はないものかとリサーチしていた。そんな最中、日本SGIと北里大学がSARSウイルスを作るたんぱく質の立体構造をコンピュータで予測したデータを無償提供するとの情報が舞い込んだ。両者の迅速な「決断」は歓迎に値する。
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