北斗七星

北斗七星 2003年10月13日付 Vol.1009

2003/10/06 15:38

週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載

▼1984年、インドのボパール市にあるユニオン・カーバイド社の化学工場から有毒ガスが流出、多数の死傷者を出した。史上最悪の化学ジェノサイドといわれるボパール事故である。死者だけでも2000人以上、中毒患者は数万人規模にのぼった。生活を豊かにするはずの工場が、一転して人々に刃を向ける。

▼9月3日、新日本製鉄名古屋製鉄所でタンク爆発。9月8日、ブリヂストン栃木工場で出火、鉄筋3階建ての建物をほぼ全焼。9月28日、出光興産北海道精油所のナフサタンクから出火。名だたる有名企業の施設で、立て続けに事故が起こっている。工場周辺の住民は、火災の影響で一時避難を余儀なくされたり、体調の不良を訴えている人もいる。また、その経済的損失も計り知れない。

▼製品の質の高さと安全性は、日本企業のお家芸だった。工場には大きく「安全第一」の看板が掲げられ、QC(クオリティコントロール)運動が工場の隅々にまで行き渡っていた。ところが、大企業の相次ぐ事故を見ると、かつての安全神話は崩壊したと言わざるを得ない。安全対策はどうなっていたのか、企業の信頼性が今、大きく損なわれている。

▼ボパールで大惨事を引き起こした会社の最高経営責任者は、現地裁判所で司法の裁きを受ける前に姿をくらまし、現在も逃亡中だという。日本企業の責任者は、よもやこのようなおろかな行動はしないだろう。冷静に、毅然と、誠実に、事後処理と安全神話の回復にむけて、その重責を全うしてほしいものだ。
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