深セン(シンセン)と香港は一本の川をボーダーとして、あいかわらず自由な往来が制限されている。外国人にとっては、国境と同じでパスポートやビザの検査が行われる。中国人は、パスポートこそ不要だが、港澳通行証と香港のビザを持つことにより、深セン側から香港に入ることができる。

 一方で香港の市民が中国へ渡ることは非常に楽である。香港の身分証1枚で自由に中国領に入れる。香港は中国の一部なのだから当たり前といえば当たり前である。香港の人口も600万人程度であるから、大勢の香港人が中国側へ移動したとしても、たかがしれている。

 経済特区の深センの身分証は、企業人以外の一般の人々にも人気がある、それは、深セン市の身分証を持っていると香港のビザの取得が楽になるということである。

 もともと、深センで生まれ育った市民は非常に少ないが、彼らは、当然身分証は持っている。しかし、他の地域から深センに移り住んだ後に、深セン身分証をとるのは簡単ではない。

 1つの方法として、深セン市職業技能鑑定の資格をとる方法がある。そのためには試験を受けなければならない。それらは、コンピュータの知識、ビジネス英語、流通関係など多岐にわたる。

 深セン市としては、優秀な人材にのみ特典を与えるというわけで、共産主義国家の中国にあっても熾烈な競争社会を作り出しているわけである。

 で、何が優秀かということになるが、さきの職業技能鑑定の試験で出た内容の一部を披露しよう。

 「パソコンのOSであるウィンドウズで、ソフトのウィンドウを閉じるためのアイコンはどこにあるか。上、下、右、左?」

 正解は右上なのだが、そのような選択肢はない。質問自体もあまり意味はないのだが、ちゃんとした回答が出せないというのも困ったものだ。

 他にも、曖昧な問題が続く。運良くパスすると、めでたく、深センの身分証が取得でき、香港への渡航が自由になるわけである。(深セン発)