【本郷発】7月28日付の朝日新聞夕刊から、イーデス・ハンソンさんの連載記事『人生の贈りもの』が始まった。彼女は和歌山に移り住んで久しい。21年目になるとか。一度、同じ飛行機で出会ったことがある。日本人の多くが和歌山・田辺市を忘れかけているころから、熊野の良さ、田舎の良さを語り継いでいて、ずっと気になっているなかの一人だ。インタビュー記事を抜粋する。和歌山は「都会と違って、夜がちゃんと暗くなるところです」。記事は穏やかな会話で始まった。生まれはインドで、小さい頃は「ままごととか、女の子の遊びは面白いとは思わへんかった」と関西なまりの記事が続く。登場人物が外国人だから、雰囲気が伝わってくる。もんぺをはいたハンソンさんの写真を見たこともある。田舎ののんびりさは、魅力的だ。

▼確かに和歌山は田舎だ。JR紀伊田辺の駅前も、なんとも、まったりしていた。その田舎ぶりがいいのだと思って、ときどき和歌山に出かける。そんな話をBCN編集部でしていたら、(私が住んでいる)「根津も高円寺に比べたら田舎。だから、8月15日に引っ越す」という編集部員が現れた。聞けば、高円寺は不夜城で、夜に終わりのない街のようだ。根津は夜8時ともなると、ひっそりして、人通りががたっと減る、というわけだ。「人並みの街」だから引っ越すのだという。そうか、根津は都内の和歌山なんだ。そういえば、和歌山に惹かれて通うぐらいだから、根津は和歌山らしいのかもしれない。

▼根津のお気に入りのひとつに、NHKのラジオ体操がある。今年、ラジオ体操は80周年を迎えたそうだ。根津神社の境内には1928年生まれから2005年生まれと思われる世代が集まる。そこに「タンタカターン、タンタカターン、タ、タ、タ、タ、タタタ…」の例の音楽が境内に鳴り響く。老いも若きも同じ体操を同じ時刻に全国で、80年前から続けてきている。なんだか、空恐ろしさを感じないわけでもないが、中国の朝の公園に見る、思い思いの太極拳の風情に、お国柄を感じる。自然に囲まれた環境好きは「子供のときに出来上がった基準やないかしら」とハンソンさんは言う。ラジオ体操はいつまで続くのかしら。(BCN社長・奥田喜久男)