北斗七星

北斗七星 2008年11月24日付 Vol.1261

2008/11/24 15:38

週刊BCN 2008年11月24日vol.1261掲載

▼平安京遷都以前からの歴史をもつ京都の清水寺。ここでは毎年12月中旬、同寺貫主が揮毫(きごう)者として世相を表す「今年の漢字」1字を背丈ほどの大きな和紙に書す。昨年は高級料亭「船場吉兆」の偽装など、世を欺く事件が相次ぎ「偽(いつわる/にせ)」が選出された。2008年の今年。本命は「危(あやぶむ)」であろう。

▼米国に端を発した「金融危機」。世界では庶民生活の実体経済にこの危機が波及している。外国メディアからはこの危機に端を発する混乱ぶりが報道される。米農務省は景気悪化で米国全土に子供の「飢え」が広がると予測(CNN)。韓国では避妊具販売数が前年比20%近く増えた(朝鮮日報)ことから、長期的な不安に備え生活防衛が鮮明化したと騒ぐ。

▼「あやぶむ」を広辞苑で引くと「気がかりに思う」「懸念する」という意味になる。だが、今年の「金融危機」はそれぞれの意味する「ぎりぎり感」ではなく、すでに生活に影響を与えている。そこまで深読みすれば「響(ひびく)」が「今年の漢字」だろうか。

▼風物詩となった清水寺での行事は、日本漢字能力検定協会が一般公募した漢字が題材になる。行事の終いには次年を憂い下の句が必ず付く。昨年は「来年は『看板に偽りなし』の安心な社会を願う」だった。さしずめ今年は「未来を危ぶまず、足下を見つめ一日一日を歩め」といった慰めに近い句になる。IT不況もじわじわ迫る。こんな時代だからこそ、中期的な実利を追求したい。
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