北斗七星

北斗七星 2009年7月20日付 Vol.1293

2009/07/20 15:38

週刊BCN 2009年07月20日vol.1293掲載

▼コンビニが普及する前の話。食品・雑貨店の冷蔵ショーケースに飲料メーカー各社の担当者が日参する姿が見られ、異なるメーカー担当者が代わる代わる訪れるたびに、前面に置かれる商品が入れ替わる。「他社の商品を後ろにしてうちのを前に置け」。時にはラベラーを手に「値札打ち」を手伝う。店のオーナーの気を惹くことで店頭販売を優位に導くためだ。

▼「私自身を慰めるためには贅沢ということが必要であった」。モノがいまほど氾濫していない時代。この一節が記してある梶井基次郎の小説「檸檬」ではないが、色鮮やかな品々が並ぶ駄菓子屋の店先に足をとめて、小一時間過ごすことにちょっとした贅沢を味わえたものだ。

▼しかし今は、飽食の時代。飲料販売の主力は駄菓子屋からコンビニに移った。“棚争い”は影をひそめ、メーカー担当者の“努力”は通用じない。銘柄を見て、あるいは陳列棚の“美しさ”に惹かれて購入する人は減りつつあり、大量に置かれた商品が安ければ手を伸ばす。食品国内トップメーカーのキリンとサントリーが経営統合の交渉に入ったのも、こうした背景があるのだろう。

▼いよいよ衆院解散・総選挙がやってくる。信を問わず首相がたびたび替わる様は、昔の雑貨屋のように面白みはあっても、もう騙されることはない。さりとて、「民主党」の銘柄さえあれば投票する、では困る。党や候補者個々の政策に耳を傾け判断しよう。いまこそ国民の真価が問われているのだ。
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