右を向いても左を見ても“雲”だらけ。世はまさにクラウドの時代である。クラウド・コンピューティングについては、それをビジネスとするスタンスの書籍が多い。今回取り上げるのは、それらとは一線を画した「ユーザーの立場」から書かれた本である。
「グーグル・トレンドのサービスで『クラウド』というキーワードを指定してみると、07年後半に登場していることが分かる」──著者はまず、第1章でクラウド誕生の経緯を説明している。04年頃に登場して一大ブームを引き起こしたWeb2.0はクラウド・コンピューティングの前身と定義づけられている。B2CモデルだったWeb2.0はリーマン・ショックを境に勢いを失った。それに代わって勢いづいてきたのが、B2B型のクラウド・コンピューティングである、と。その理由が分かりやすく解説されている。
本書の“ミソ”はユーザー視点に立った解説にある。例えば「どのサービスを利用するか」では、グーグルのGメールについて触れられている。容量が莫大なGメールでは、〝削除〟という操作がほとんど不要という。届いたメールはフォルダにどんどん保存していけばいいわけだ。「ビジネスで使えるクラウド・サービス」という項目もあり、アマゾンEC2などの使い勝手が説明されている。
地方取材で全国を飛び回った著者は、旅先でクラウドをフル活用して本書を書き上げたそうだ。それだけに説得力のある使い方が随所に散りばめられている。(止水)
『雲のなかの未来―進化するクラウド・サービス』武井一巳著 NTT出版刊(2200円+税)
