BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ネットビジネスの終わり』

2010/01/14 15:27

週刊BCN 2010年01月11日vol.1316掲載

 新年早々、ネガティブなタイトルの本を挙げるのは気が引けるが、隆盛といわれる「ネットビジネス」を、少し距離をおいて冷静な視点で観察することに意味があると考えて取り上げた。

 内容は四つの章に分かれている。そのうち、第一章は、トヨタ自動車やNTTなどのビッグビジネスが置かれている状況と、内在する問題点が描かれている。本論であるネットビジネスにたどりつくまでにこの章を40頁ほど読まなくてはならないのは、少々もどかしさを覚える。

 第二章「瀕死のメディア産業」、第三章「アニメ、ゲームが成長産業になれない理由」、第四章「情報革命ブームの終焉」がこの本の主題である。例えば第三章。いまやわが国を代表するほどの成長産業ともてはやされるアニメ関連産業だが、日本国民は意外にアニメを見ないという実態を「デジタルコンテンツ白書」から浮き彫りにしている。

 第四章では、インターネットや携帯電話の発展、普及によって、私たちの生活は安寧になったはずだが、実際には「各人の利害は情報技術の進展によってより先鋭化し、競争は激化し、対立構造が顕著になっている」と分析されている項目があり、なるほどと思わせる。

 このように、ほぼ全篇が問題点の指摘であり、その鋭い分析には納得性がある。ただ、サブタイトルの「ポスト情報革命時代の読み方」については、明確に示唆されている箇所が見当たらない。その点は残念である。(止水)

『ネットビジネスの終わり』
山本一郎著 PHP研究所刊(952円+税)
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