BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』

2011/01/13 15:27

週刊BCN 2011年01月10日vol.1365掲載

 VAIO、スゴ録と、ヒット商品を次々と生み出した辻野晃一郎氏は、不本意ながら、人一倍愛したソニーを去ることとなった。なぜなのか――。

 かつて市場を席巻したトリニトロン方式のブラウン管テレビ、音楽の愉しみ方に変革を起こしたウォークマン。ソニーが創り出す製品はどれもこれも輝いていた時代があった。それが今や、テレビは薄型への移行で出遅れ、携帯オーディオプレーヤーはアップルにしてやられてしまっている。この本を読むと、その理由がよく分かる。一言でいえば、ソニーに官僚体質がはびこり、縄張り争いがあちこちで起きていることに尽きる。

 スゴ録を発売した時の話。「快進撃とも言える発売当初の売り上げを、当時のあるトップマネージメントに報告しに行った。『よくやった』という言葉を期待していた。しかし、報告書を見て、面と向かって彼が言い放った言葉は今でも忘れることが出来ない。『まあ、ソニーだからなぁ。出せば売れるんだよ』。私は一瞬にして頭に血が昇った」。井深氏や盛田氏が築き上げてきたソニーのブランドバリューにただぶら下がり、食い潰すだけの人たちが増えた結果がソニーショックを引き起こしたと断じる。

 辻野氏が取り組んできたプロジェクトやカンパニーは梯子をはずされ、ウォークマンの立て直しも、社内の縄張り争いでおかしなことになってしまった。 グーグルに転じた氏は、この若い会社に、かつての意気盛んなソニーの姿を重ねてみたようである。(止水)


『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』
辻野晃一郎 著 新潮社刊(1500円+税)
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