BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『仕事オンチな働き者』

2011/04/28 15:27

週刊BCN 2011年04月25日vol.1380掲載

 タイトルゆえに売れた感がなくもない『残念な人の思考法』から一年。今度は「仕事オンチ」をもってきた。版元は同じ。話の軸も『残念な人の思考法』と同じ。しかし、これでもかというくらいの喩え話によって、説得力のある内容に仕上がった。

 著者は、現代社会を「時間消費社会」と規定する。食べ物を獲得するのに全身全霊を傾けていた古代社会と違い、衣食住が満たされ、あらゆる物ごとが便利になった現代社会では、消費者は時間的・経済的余剰をどう使うかを考える。そして、消費者に時間をつぶすための財やサービスを提供するのが企業の役割だ。本書は、どうすれば企業(企業人)が消費者(取引先)に受け入れられるのかを説いている。

 重要なのは、自分のKPI(目標管理における重点項目)を「他人のKPIに乗せる」ことだという。つまり、相手に目標を達成してもらうことによって、自分の目標を達成する。自分あるいは自分のビジネスが、相手の自己実現の環のなかに入っていくことが、成功への道なのだ。そして、時間消費社会で商売になるモノやコトのほとんどにとって、should(すべき)よりmust(しなければならない)、mustよりもwant(したい)が大切だとする。「やりたいからやる」で自分のKPIを設定し、他人のKPIを「○○したい」にさせること。そのために、「共感するメッセージ」を発すること――。

 例によって、「仕事オンチ」を矯正する本ではない。しかし、人と接するときに鍵になるものを考えさせる。(叢虎)


『仕事オンチな働き者』
山崎将志著 日本経済新聞出版社刊(850円+税)
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