BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『中国人一億人電脳調査―共産党より日本が好き?』

2011/07/07 15:27

週刊BCN 2011年07月04日vol.1389掲載

 時事通信社に入社し、2002年から07年まで中国総局(北京)特派員、現在は外信部記者を務める“中国ウォッチャー”が書いた本である。

 序章では、東日本大震災が中国人の日本人観を大きく変えたことに言及している。3月11日、著者は早稲田大学の日中交流プロジェクトに参加するために来日していた中国の弁護士や研究者、ジャーナリストなど5人と行動をともにしていた。大震災に遭遇した日本人の沈着冷静で整然とした動きは、中国の一行に衝撃を与えた。「日本に学び日本人に学習しよう。災難を前にして指導者の指示がなくても社会は依然として動いている」──こんな内容のブログを宿泊先のホテルから中国に向けて発信するなど、日本人の行動を礼賛する意見が相次いだことを紹介している。

 本書は、東日本大震災の件を序章として、「新浪微博」(中国版ツイッター)から中国の若者の動向を探ろうと試みる。例えば、尖閣諸島沖での漁船衝突事件で日中関係がぎくしゃくしている折の2010年10月、菅首相と胡錦濤主席の会談が行われた。まさしくその時、ネットは別の件で炎上していた。中国の若者は、日本のAV女優である蒼井そらの動向をフォローしていた。ちなみに、蒼井のフォロワー数は日本人トップの287万人に達している。日中関係の「官」と「民」の乖離を象徴する出来事だと著者はみる。

 以下、ネット空間に飛び交う中国の若者の本音が紹介されており、かの大国の実像と未来を探る手がかりを与えてくれる。(止水)

『中国人一億人電脳調査―共産党より日本が好き?』
城山英巳 著 文藝春秋刊(870円+税)
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