BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『官僚に学ぶ仕事術』

2011/08/18 15:27

週刊BCN 2011年08月08日vol.1394掲載

 読み進めながら、既視感にとらわれるのはなぜだろうと思いつつ、読後に気がついた。35年前の『知的生活の方法』だ。自分のやってきたこと、やっていることを記述することで、具体的ノウハウを伝授する。本書にはワインを飲めとは書いていないけれど、テレビを見るな、スポーツジムに行くなとは書いてある。では、それが鼻につくかというと、そうでもない。それは、著者が成果を出さざるを得ない現場、不夜城・霞ヶ関官庁街にあって、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指すという新しい働き方を実践しているからにほかならない。

 一度でも官僚と一緒に仕事をしたことのある方ならおわかりだろうが、彼らの仕事量はすさまじい。とくに現場の第一線である課長補佐以下の忙しさは、想像を絶する。それをこなしながら、プライベート・ライフを充実させようというのだから、著者の説く効率的な働き方、情報収集と取捨選択の方法、人脈形成術、英語習得法などが、俄然輝きを放ってくる。

 2年で1ポスト、若手のうちは1年で部署が変わることも珍しくない世界。それでも、政策立案には専門知識の吸収が欠かせない。最小限のインプットで最大限のアウトプットを得るよう、意識しながら情報を得る。その方法論だけでも、一読の価値はある。

 ただし、ここで紹介されるのは、実は非常に研ぎ澄まされたノウハウだ。生半可な覚悟では実践できないことをお忘れなく。そのあたりが『知的生活の方法』と最も異なる点かもしれない。(叢虎)


『官僚に学ぶ仕事術』
久保田 崇 著 毎日コミュニケーションズ刊(830円+税)
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