BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『アフリカで 誕生した人類が 日本人になるまで』

2011/11/17 15:27

週刊BCN 2011年11月14日vol.1407掲載

 秋の夜長は、私たち日本人のはるか遠くの祖先に思いを馳せるのも一興と考えて、この本を選んだ。

 本書の前半は、猿人からホモ・サピエンスに至るまでの進化の過程に触れている。直立二足歩行こそが人類の運命を決定づけた。両手をさまざまな用途に使うようになって脳が発達し、どんどん大きくなってきた。大きくなった脳を収納し、二足歩行で支えることができるようにするために、人類の頭は類人猿とは異なる丸い形になった。

 では、なぜ人類は直立二足歩行をしなければならなかったのか。猿人・原人・旧人・新人はどこがどう違うのか。女性の胸はなぜ膨らんでいるのか、また唇はなぜ艶っぽいのか──。これらの興味の尽きない事柄(?)は本書を読んでいただくとして、アフリカで誕生した人類は、いかにして日本へやってきたのかについての本題に入っていく。なお、かつては原人が世界各地で独自に進化してホモ・サピエンスになったという「多地域進化説」が主流だったが、現在の人類学では「アフリカ単一起源説」が大勢を占めているそうだ。

 日本で最古の化石人骨は、沖縄県の洞穴で発見された子どもの大腿骨と脛骨で、推定4万~3万6000年前頃のものとされている。旧石器時代から縄文時代に入り、やがて北方民族とみられる弥生人が日本を席巻し、貝塚を残した。そして、古墳時代へと時代は移っていく。もしタイムマシンがあるならば、そうした時代に生きた“大先輩”の生活をのぞいてみたい。(止水)


『アフリカで 誕生した人類が 日本人になるまで』
溝口優司 著 ソフトバンク クリエイティブ 刊(730円+税)
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