BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『グレイトフル・デッドに マーケティングを学ぶ』

2012/04/12 15:27

週刊BCN 2012年04月09日vol.1427掲載

 1960年代のアメリカは、混沌としていた。女性解放運動や公民権運動、反戦運動はヒッピーやサイケデリックというカウンターカルチャーを生んだ。65年、サンフランシスコで誕生したグレイトフル・デッドは、そんな時代を象徴するバンドの一つ。伝説のウッドストック・フェスティバルに参加した多くのバンドがその後消えていくなかで、95年にリーダーのジェリー・ガルシアが亡くなるまで活動を続け、以後もメンバーがバンド名を変えて志を受け継いでいる。

 グレイトフル・デッドが長きにわたってファンに支持されてきた理由から、マーケティングのエッセンスをくみ取っていこうというのが、本書の眼目だ。著者たちは彼らの熱狂的なファン──「デッドヘッズ」であり、現役のマーケッターでもある。ファンとしての熱い語りはあるが、彼らの音楽性やメッセージ性にはあえて触れずに、純粋にビジネスモデルを探っていこうとする姿勢は非常に好ましい。

 グレイトフル・デッドは、ツアーバンドだった。もちろんアルバムも出しているが、ビジネスの柱にしていたのは95年までにおよそ2300回行ったというライブである。つまり、ファンと直接触れ合うことから生まれるさまざまな伝播効果を、新たなファンづくりに生かしているのだ。そこには、「フリーミアム」に代表される現在のウェブやSNSに通じるビジネスモデルや、企業の社会的責任を考えさせるヒントが眠っている。特徴ある装幀と相まって、楽しみながら読める「ビジネス書」(糸井重里氏評)だ。(叢虎)


『グレイトフル・デッドに マーケティングを学ぶ』
デイヴィッド・ミーアマン・スコット /ブライアン・ハリガン 著
日経BP社 刊(1700円+税)
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