【バンコク発】足かけ3年ほど、海外でいろいろな方々と会ってきた。そんななかで、海外の事業が好きで好きでたまらないという方と出くわすことがある。今回、バンコクで会った、MATの社長の青木正敏さんはその一人だ。MATは、マテリアル・オートメーション タイランドの略。バンコクで創業して以来、21年になる。現在はタイ国内に3か所とベトナムに営業拠点がある。事業内容は日系企業向けに複写機やプリンタを販売したりソフト開発を手がけるSIerだ。従業員は総勢150人、うち22人の日本人が在籍している。
▼海外での取材は、出会い頭のようなかたちで始まり、当方の質問とそれに対する答えのキャッチボールが円滑にいくまでの間、緊張を強いられる。ありがたいことに、青木さんとは短時間でボールのやり取りが始まった。その引き金になったのが、「私は2006年までキヤノンの海外事業部門にいましてね。早期退職して、2007年からMATの社長を務めています」の言葉である。経歴をうかがうと、「キヤノン(中国)の副社長として中国の広州地区一帯の複写機事業を担当していました」とのこと。米国、シンガポール、香港、タイ、中国――海外事業経験は通算で32年、一貫して複写機事業の担当だ。代理店販売網とサービス網を構築するプロである。キヤノンブランドを築いてきた海外事業のベテランがバンコクにいる。
▼複写機はプリンタと融合して、すそ野の広い市場を形成している。いわゆるストックビジネスとして魅力的な事業なのだ。GDPが伸びている中国・ASEAN市場の期待の星といっていい。これらの商品の販売手法は日本のIT機器メーカーが得意としている。そのノウハウを基盤にして各国の商慣習に適応した販売手法を編み出すことができたら、日本勢の得意領域に呼び込むことができる。青木さんと話していて、期待が膨らんだ。(BCN社長・奥田喜久男)

バンコクで出会ったMATの青木正敏社長