BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『世界最強チェーンを作ったレイ・クロックの5つの教え』

2013/03/21 15:27

週刊BCN 2013年03月18日vol.1473掲載

 異国の街角にマクドナルドを見つけると「ほっとする」という人は多い。それは、どの国のマクドナルドに行っても清潔で、同じサービスが受けられ、同じ品質のハンバーガーを食べられると知っているからだ。

 本書は、世界120か国・3万店以上の巨大店舗網を支えるシステムをつくり上げたレイ・クロックのマネジメントの考え方と、日本マクドナルドの初代スーパーバイザーを務めた林俊範が具体的に落とし込んだ手法を、五つの「教え」にまとめた一冊。五つのうち四つは「人」に関するもので、「訓練の仕組みづくり」「キャリアプランづくり」「公正な評価」「権限の委譲」という職能資格制度を採り入れている企業なら、どこでも取り組んでいるであろうことばかり。残る一つも、冒頭に挙げた「品質(Quality)、サービス(Service)、清潔(Cleanliness)を通じて価値(Value)を提供することで、お客様は満足を感じる」という「QSC+V」という考え方で、これとてもサービス業にとっては目新しいものではない。しかしマクドナルドの場合は、その徹底の度合いと、使うツールの充実ぶりが違う。

 マクドナルドの店舗を支える従業員(クルー)は、ほとんどがパート・アルバイト。彼らは標準化した「QSC」の考え方の下で基本的な作業を覚え、一人前になって人に教えることができるようになり、マネジャーに至る。クルーたちは教育によって、社内企業家としての素地を身につけ、なかにはフランチャイズのトップにまで上り詰める人もいる。人を育てることの要諦と、そのためのツールの使い方がコンパクトにまとまった一冊だ。(叢虎)


『世界最強チェーンを作ったレイ・クロックの5つの教え』
中園 徹 著
日本能率協会マネジメントセンター 刊(1400円+税)
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