創造性経営の基本文献

 2007年2月に刊行されたイノベーションのバイブルが、加筆・改訂されて文庫に下りてきた。初版から間もなく7年がたとうとしているが、日本企業の抱える課題は当時とそう変わっていない。それは競争力のある商品を開発することと、それを生み出す経営のイノベーションだ。

 インターネットによる情報革命によって、技術や知識はもはや利益を維持するための切り札にならなくなった。競争力の源泉になるのは、創造性を用いた経営、すなわち「デザイン思考」にもとづいた経営戦略だ。ここでいう「デザイン」とは、商品や広告のそれではない。自分が暮らしている日常の世界を他者の目で見ることから始めて、新しいアイデアを表現する構成を考え、最終的なかたちにしていくプロセスのことだ。だから製品開発での「デザイン思考」とは、まず顧客を発見し、その顧客を満足させるためのコンセプトを決め、どのように販売するかまでを考えるビジネスの方法論ということになる。本書は簡単にいえば、筆者がさまざまな会社と行ってきた新商品開発のプロセスを方法論として標準化したものといえる。

 本書では、デザイン思考にもとづいた経営戦略の事例として、アップルやGE、P&Gなどを挙げている。IT企業も多い。しかし7年の間に、これらの企業のなかには失敗例も出た。著者は2012年に出版した中級編『デザイン思考と経営戦略』(NTT出版)のなかで、その失敗を「デザイン思考の使い方が間違っている」とした。そのあたり、読み比べてみるのもおもしろい。(叢虎)


『デザイン思考の道具箱 イノベーションを生む会社のつくり方』
奥出直人 著
早川書房 刊(700円+税)