BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『イケアはなぜ「理念」で業績を伸ばせるのか』

2014/05/22 15:27

週刊BCN 2014年05月19日vol.1530掲載

外資系企業にみる「日本的経営」

 世界最大の家具チェーンのイケアは、従業員を「ともに働く仲間」という意味を込めて「コワーカー」と呼ぶ。14万人にも及ぶ世界中のコワーカーたちの働き方のベースになっているのが、創業者イングヴァル・カンプラードの言葉をもとにして1976年につくられた「ある家具商人の言葉」という小冊子である。これをベースにして、イケアのアイデンティティが確立され、DNAとしてコワーカーたちに伝承されているのだ。とはいえ、イケアが掲げる企業理念はこむずかしくはなく、きわめてシンプルである。「より快適な毎日を、より多くの方々に」がそれだ。

 ユニークなのは、人材採用である。スキルやキャリアよりも、企業理念に共鳴する資質のほうがイケアにとっては大切なのだ。同社のホームページの採用関連コーナーには、「社風適性クイズ」なるものがある。10項目の質問に答えると、イケアで働く資質があるかどうかがチェックできる仕組みだ。「おめでとうございます! イケアで働く準備はOKですか?」と歓迎メッセージが出ることがあれば、「あら、あなたは従業員としてよりもお客様としてイケアに関わるほうがいいようですね」と、やんわり断られる場合もある。学歴や経験、資格よりも資質を重視する。社内文化に溶け込める人材を強く求めているのだ。外資系企業でありながら、終身雇用制の下に「チームの和」を重んじる、かつての日本企業の姿を忠実になぞっている姿が浮かび上がってくる。(仁多)


『イケアはなぜ「理念」で業績を伸ばせるのか』
立野井 一恵 著
PHP研究所 刊(840円+税)
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