BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』

2013/10/10 15:27

週刊BCN 2013年10月07日vol.1500掲載

真の感動とはこういうものなのだ

 あの東日本大震災が発生した時、被災者のもとへいち早く救援物資を届けたのがクロネコヤマトで、しかもドライバーたちのボランティアだったというのは有名な話だ。とはいうものの、彼らの行動の根源となった「ヤマト魂」はどこから生まれるのかについては、この本を読むまで知らなかった。

 著者は、ヤマト賛歌を並べ立てるのではなく、事の是非をきちんと書き分けている。例えば、大震災の際に佐川急便は本社の指示でボランティア活動からの撤退を指示したことについて、「会社である以上、利益は追求していかねばならないし、ボランティアで会社を継続することはできない。佐川の意思決定の方がノーマルなのである」としている。

 それにしてもである。ヤマトの企業行動には頭が下がる。震災からしばらくたった4月1日、ヤマトホールディングスの新社長に木川眞氏が就任した。その就任式で木川氏は、全幹部を前に「東北はクール宅急便などでヤマトを育ててくれた地域でもある。その恩返しとして、宅急便1個につき10円の寄付をしていきたい」と発表した。ヤマトの年間取扱い量は13億個だから、累計130億円もの寄付になる。その額のあまりの大きさに会場は一瞬静まり返ったが、やがて大きな拍手に包まれた。これぞヤマト魂だと、幹部たちは瞬時に理解したのだ。

 著者は実際に宅配のトラックに同乗して、末端までヤマト魂が浸透している理由を解明しようとしている。久々に、一気に読み通す本と出会った。(仁多)


『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』
石島洋一 著
PHP研究所 刊(840円+税)
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