北斗七星

北斗七星 2014年11月24日付 vol.1556

2014/11/27 15:38

週刊BCN 2014年11月24日vol.1556掲載

▼「泡を食って出世したのは鯔(ボラ)ばかり」。ドジな泥棒役の主人公が、慌てず落ち着くようにと、自分に言い聞かせる。古典落語『出来心』の一シーンである。

▼出世魚のボラは、成長とともに目まぐるしく呼び名が変わる。関東では「オボコ」「イナッコ」「スバシリ」「イナ」「ボラ」「トド」といったぐあいで、最後のトドは「とどのつまり」の語源とされる。出世魚は縁起物のはずだが、ボラだけは慌て者の代名詞になってしまった。

▼2005年に個人情報保護法が全面施行されてから、「個人情報」が広く一般に認知されるようになった。今や「個人情報が保護されるのは当然」の状況だ。ソーシャルメディアやビッグデータ関連技術など、個人情報を取り巻く環境は大きく変わったが、過度な防衛意識がそれらの活用を阻害する要因となっている。

▼「個人情報」の代わりに登場したのが「パーソナルデータ」。IT総合戦略本部が採用するほど、出世用語として認知された。今回は、英語化で逃げ切れそうだが、情報化社会の進展はトドまるところを知らない。泡を食って出世を急ぐよりも、本質の議論が求められる。(風)
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