いまこそ必要な人間主義的マネジメント

 日本では経営に携わる実務家を中心に読まれ、さまざまな経営判断の是非を問う際によく引き合いに出されるマネジメントの神様、P・F・ドラッカーの著作。しかし、米国のビジネススクールではもはやドラッカーは過去の人で、講義では無視されているという。代わって盛んなのが、データを駆使し、企業利益や株主価値を最大化する経済合理的マネジメントの研究だ。しかし著者は、「実証主義的な科学的経営学」だけでマネジメントを考えようとすると、いつかどこかで不条理──経済効率を追求して不正を犯したり、短期的利益に目を奪われて長期的利益を逸したり、個別利益にこだわって全体利益を無視したり──に陥ると警告する。経済合理的マネジメントには、ドラッカーのような人間主義的マネジメントが補完的に必要になるというのだ。

 経済合理的マネジメントと人間主義的マネジメントをつなげるのは、カント哲学だ。自由で自律的行動から生まれる責任感や、人格を尊重し合うことを原理とするカント哲学は、ドラッカーが挙げる経営者の資質として必要な「真摯さ」に通じる。そして日本のビジネスエリートたちは、戦前はカント哲学を学び、戦後はドラッカーのマネジメントを学んできた。この符合が、人間主義的な日本企業のマネジメントを支えている。

 著者は、晩年の小林秀雄が追求していた「大和心」まで引き合いに出しながら、日本の企業が陥りつつある経済合理的一辺倒のマネジメントに警鐘を鳴らしている。その意気やよし。(叢虎)


『ビジネススクールでは教えてくれないドラッカー』
菊澤研宗 著
祥伝社 刊(780円+税)