▼もう何十年も前の話。金融機関に融資を頼みにいった知人が、怒り心頭の状態で帰ってきた。融資を断られただけでなく、用意した印鑑を見た行員が「貧乏臭い」と指摘して高笑いしたという。あきらめなかった知人は、高価な印鑑を購入し、別の金融機関からの融資で事業を成功させていく。高笑いした行員は失礼極まりないが、知人は感謝すべきなのだろう。

▼日本では大企業が強く、小さなベンチャー企業は軽視されがちだったが、その風向きが変わり始めている。確かな技術力をもつベンチャー企業が台頭するようになったからだ。フィンテックやAI(人工知能)の分野で、その傾向が顕著になっている。大手ITベンダーには売り上げにつながらない新分野に投資するよりも、ベンチャー企業との協業で様子をみたいという思惑がある。

▼次の段階として注目されるのは、市場活性化後の動き。大手企業がベンチャー企業を買収するのか、ベンチャー企業が大きくなるのか。いずれにせよ、重要なのは大手企業の立ち居振る舞いだ。ベンチャー企業との関係が、大手企業の命運を左右するようになる。選ぶ立場にいるのはベンチャー企業なのである。(風)