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飛行士と技術者の対立と協働


 アポロ11号の月面着陸から今年7月20日で50周年を迎え、世界中でアポロ計画を回顧する動きが見られる。本書では、宇宙ファンからはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の“名解説者”として知られる著者が、アポロ計画に携わった幅広い人物を描く。

 アポロの物語では「宇宙飛行士」にスポットが当てられることが多いが、システム工学者である著者は、加えて宇宙船を開発・運用する「技術者」、任務に学術的な意味を与える「科学者」、これら3者の微妙な関係性の上にアポロ計画はあったと説く。同じ方向を向いているように見える3者が、時として対立しながら偉業を遂げた過程はスリリングだ。また、飛行士たちを頼もしくサポートし、一方で鳴り止まないアラームを発して悩ませたのが、クロック2MHzの誘導コンピューターである。

 ソフト開発者が気を利かせて組みこんだフェイルセーフ機構を、NASAは「運用でカバーできる」と拒絶した。“システム開発あるある”の容易に想像できるシーンである。(螺)


『3つのアポロ 月面着陸を実現させた人びと』
的川泰宣 著
日刊工業新聞社 刊(1800円+税)