自由でいることは難しい

 本書は4月7日に発表された今年の本屋大賞受賞作。奔放な家庭で育ち早くに家族を失った少女と、厳格な母親に育てられた小児性愛者の青年という世間一般の常識から外れた二人の不思議な関係を描く物語だ。社会にはびこる固定観念に苦しみながらも不器用に生きていく有り様は、常識とは何か、人間関係とは何かを読者に対して静かに問いかける。

 人は誰しも自らの価値観を持って物事を判断する。時にはその人を十分に理解せずに決めつけていないだろうか。そしてその価値観は人の受け売りではなく自らのものなのだろうか。

 誰しも表面の印象だけで誤解され、逆に誤解してきた経験があるだろう。インターネットが整備され、より人と人がつながりやすくなった昨今だからこそ、本書が提示する自分とは違う何かを否定しない姿勢を大切にしたい。読後は夕飯をアイスクリームだけで済ませても、悪くないと思えるようになっているかもしれない。(万)
 


『流浪の月』
凪良 ゆう 著
東京創元社 刊(1500円+税)