本来誰もが「減らしたい」はず


 誰もが「お金がほしい」と思っている。しかし、お金が人に喜びを与えるのは、欲しいものを手に入れたり、楽しい時間を過ごしたりするために「お金を使った」ときであり、本当はみんな「お金を減らしたい」はずだ。減らすために、一時的に増やしているのである。「減らし方」というのはやや刺激的な書名だが、本書の中身はお金の有用な使い方を指南するというよりも、著者の経験や随想を通じて、お金とは何かの本質に迫ろうとするものになっている。

 億万長者のベストセラー作家である著者のエピソードそのものは、読者の人生に応用できる部分はほとんどなさそうだが、お金の不安に立ち向かうための思想としては有用だ。思わず「お金がないから○○ができない」とぼやいてしまったき、それは本当にお金が理由なのか、○○をしたいという欲求がたいして強くないからなのか。預金口座の残高が増えること自体が快楽になってしまっていたり、消費の目的が他者からの承認を得るためになってしまっていないか。本来自分は何のためにお金を「減らしたい」のか、先が見通しにくいときこそ自問したい。(螺)


『お金の減らし方』
森 博嗣 著
SBクリエイティブ 刊(880円+税)