元通りになってほしくないことを考える


 今年はゴールデンウィークを“ステイホーム”で過ごすことを余儀なくされた。足元の状況をどう切り抜けるか、コロナ後をどう生きるかといった自身の針路だけでなく、政治や社会システムの在り方などについて思考を巡らせた読者も少なくないだろう。いずれは何らかの形で日常が戻ってくる。日常の引力は大きい。コロナ後に元通りになるべきではないことが、なし崩し的に元通りになってしまうことだってあり得る。この状況下で考えたことを何かに刻み込み、新しい世界を各自が模索することでこそ、未曾有の危機を乗り越えられる。本書にはそんなメッセージが詰まっている。

 著者は1982年生まれのイタリアの小説家、パオロ・ジョルダーノ。イタリアで新型コロナの感染が本格化し始めた2月後半から3月前半まで現地のコリエーレ紙に掲載されたエッセイと3月下旬執筆の後書きをまとめた。ジョルダーノは博士号を持つ素粒子物理学の研究者でもあり、科学者としての知見・素養に小説家としての感性をまぶして綴った思考の軌跡は、緊急事態宣言下の日本人にとっても得るものがある。(霹)


『コロナの時代の僕ら』
パオロ・ジョルダーノ 著
飯田亮介 訳
早川書房 刊(1700円+税)