▼日本三大急流に数えられる最上川は山形県をほぼ縦断している。「五月雨を集めて早し最上川」と松尾芭蕉が詠んだことでも知られるが、7月28日から29日にかけて氾濫し、中流域で浸水被害をもたらした。実に53年ぶりの氾濫とのこと。近隣の秋田県でも河川の氾濫が相次いだ。熊本県を中心とした令和2年7月豪雨に続き、梅雨時の水害がコロナ禍中の日本にさらに厳しい試練を与えている。

▼もともと芭蕉の句は「集めて涼し」と詠まれたらしい。しかし最上川を実際に船で下った芭蕉が、そのあまりの激流に表現を改めたという。

▼勘違いしがちだが、五月雨は旧暦5月の雨なので、まさに今頃の情景を詠んだことになる。今年は五月雨を集めた結果、洪水を巻き起こしてしまったわけだ。芭蕉の名句が生まれた句会は、最上川の舟運の重要拠点だった現在の大石田町で開かれたが、今回、同町内が氾濫の中心地になったのは何とも皮肉な巡り合わせに思える。

▼従来の非常がこれからの日常と重なりつつあることを示す例がまた一つ増えたという見方もできよう。リスクを想定したレジリエンスがより重要になる時代である。(霹)