世界を支配するのは国か、テクノロジーか

 米国政府が中国のテクノロジー企業をあからさまに警戒するようになって久しい。華為技術(ファーウェイ)やZTEなど通信機器メーカーの排除はもとより、動画投稿サービス「TikTok」の国内展開を禁じるなど、中国発で世界的な影響力のあるプラットフォームを片っ端から目の敵にしていく勢いである。これはトランプ大統領の暴走なのだろうか。確かにトランプ氏でなければ行えない大胆な政策であることに違いはないが、本書を読むと、話はそう単純ではないと感じられる。

 一般的に国家の力は、軍事力、経済力、領土の大きさなどで規定されるが、現代ではそこにデジタルテクノロジーが加わった。デジタルテクノロジーは国家間の争いにおいて新たな脅威となり得る重大なファクターであり、国家間の覇権争いとデジタルテクノロジー産業の変化を関連づけて理解しなければ、未来を見通すことはできないと著者は力説する。プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業は、今や誰よりも国民の行動や思考をよく知っている。権威主義的国家であれば、このような技術を国の制御下に置きたくてたまらないだろう。また、米国の政界でも「GAFA解体論」が台頭するように、世界の支配者の座をかけて、国家とデジタル企業がしのぎを削る時代が訪れたと言えるかもしれない。我が国には、デジタルテクノロジーを中立的に活用するバランサーとしての役割が求められていくだろう。(螺)
 


『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』
塩野 誠 著
NewsPicksパブリッシング 刊(2200円+税)