▼生の岩牡蛎を一口ほおばり、冷酒や白ワインを流し込む。夏の楽しみの一つだが、季節ごとに足を運んでいたオイスターバーもご無沙汰だ。そうこうしているうちに4度目の緊急事態宣言が発令され、東京五輪は無観客に。

▼真牡蛎は冬が旬で産地は主に太平洋側、岩牡蛎は夏が旬で日本海側に名産地が多い。東北の日本海側出身者としては、牡蛎は夏の食べ物だと思っていたわけだが、20年前に大学入学と同時に上京して、「生牡蛎を夏に食べるなんて何かの間違いだろう」と頑なに主張する太平洋側出身の同級生に出会ったことを思い出す。

▼生産・流通技術の進化や情報の伝播によるものか、体感的にではあるが、この20年間でさまざまな産地のさまざまな種類の牡蛎を生で食べられる店は飛躍的に増えた。件の同級生も10年前には「やっぱり夏は岩牡蛎に限るな」と変節しており、微笑ましい限りだ。

▼行動制限頼みで目先の新規感染者数を追うだけの新型コロナ対策は、この1年半全く進歩がない。チャレンジしている他国の状況にも目を向けたほうがいい。日本の裏側に自分の知らない食文化があったことを知るだけでも、価値観はアップデートされるのだ。(霹)