異端だからできた経営再建

 日本の大手電機メーカーと言えば、かつて隆盛を極めながらも、韓国・中国メーカーの参入によるコモディティ化の波にさらされたうえ、デジタル化への対応が遅れたことにより、その地位を落としていった企業群と見られることが多い。
 

 その代表例がかつてのソニーであり、圧倒的なブランド力を持ちながらも、今世紀に入ってからはヒット商品に恵まれず、いわば暗黒期を迎えていた。ウォークマンで一世を風靡した歴史を持ちながら、アップルの「iPod」に惨敗したのは記憶に新しい。

 そのソニーを救ったのが、本書の著者であり、2012年から6年間社長を務めた平井一夫氏である。同氏は幼少時から日本と海外を行き来する暮らしをしており、常に異邦人として見られてきた。ソニーグループに入社したのも、最初は音楽事業のCBS・ソニー。その後長らく担当したのはゲーム事業で、AV機器などの「エレキ事業」が本流であるソニーにおいて常に“異端”の道を歩んできた。そこではぐくまれた、自分とは異なるものの見方や考え方を経営に取り入れることが、同氏の経営哲学の根幹にあるという。

 ただ、ソニーを復活させるために用いたのは奇手ではないとも強調されている。社員が「本当はこんなことをやりたい」と胸に秘めている“情熱のマグマ”を解き放つという、リーダーとして当然のことをしただけだという。一気に読めてさわやかな読後感のある自叙伝。(螺)


『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』
平井一夫 著
日本経済新聞出版 刊(1600円+税)