BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『危機管理広報実践ガイド』

2022/08/26 09:00

週刊BCN 2022年08月22日vol.1935掲載

不本意な印象を定着させない

 情報漏えいや異物混入、システム障害などの危機に対応した広報の体制がないと、「あの企業は不誠実だな」とのネガティブな印象が世間に定着してしまい、容易に覆せなくなってしまう。逆に危機管理に則った広報であれば、「あの企業はまじめに対応している」との印象を与え、危機直後から企業イメージ回復への第一歩が歩み出せる。

 不祥事が発覚すれば、初動の3時間で方針を固め素早く対処する。おおむね最初の3日間で世間の印象が決まると、著者の宇於崎裕美氏は指摘する。タイムリミットを守って説明責任を果たせば、企業にとって不本意な印象が定着するのを避けることができる可能性は高まる。

 SNSが発達した現代では、発覚した時点の情報が一人歩きしがちで、多くの人が多少誇張されていてもSNSの情報を鵜呑みにする傾向がある。報道機関のニュースも最初の3日間に集中する。企業が正しい情報を発信しないと、不正確な噂があっという間に広がりかねない。

 本書は初動を素早く起こすための日頃からの準備の仕方、有事の際のチェックリストに至るまで平易な言葉で解説している。企業経営者はもとより広報・IR部、経営企画、事業部門などの関係者全員のためのノウハウ本だと言える。(寶)
 


『危機管理広報実践ガイド』
宇於崎裕美 著
経営書院 刊 1540円(税込)
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