BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『負動産地獄 その相続は重荷です』

2023/03/24 09:00

週刊BCN 2023年03月20日vol.1961掲載

取り扱いに苦しまないために

 数年前に父を亡くした。葬儀・告別式を慌ただしく済ませた後、次の問題として相続が出てきた。預貯金がある口座はどこか。契約している保険やクレジットカードは。遺言書はなく、生前に財産についてほぼ話をしていなかったため、残された家族総出で契約書類などを探し回ることになった。

 現金や預貯金、宝石などのほか、相続の対象になるものとして、本書が焦点を当てる不動産がある。著者は、自然災害があっても残ることなどから、かつては「相続財産の中で不動産はスター的な存在として扱われていた」と主張する。しかし、今では「いらない不動産」になるケースがあり、地方の実家や山林、別荘などを相続し、取り扱いに苦しむ子や孫が増えているという。

 人は必ず死ぬときがくる。そして誰かが亡くなった後は、故人が築いてきた財産を相続することが必要になる。生前に相続の話をすることについて、はばかられる気持ちはよく分かる。しかし、何も準備していなければ、本書が警鐘を鳴らす「負の相続」が現実になりかねない。誰もが経験するであろう相続に備えて、今、何ができるかを考えることは非常に重要だ。(鰹)
 


『負動産地獄 その相続は重荷です』
牧野知弘 著
文藝春秋 刊 1045円(税込)
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