BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ブラック支援 狙われるひきこもり』

2023/10/13 09:00

週刊BCN 2023年10月09日vol.1987掲載

問題だらけの「引き出し屋」

 厚生労働省は、引きこもりを「さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」と定義。内閣府が3月に発表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」では、引きこもり状態にある人は全国に約146万人いると推計されている。

 本書は、「引き出し屋」と呼ばれる民間の支援団体の実情を解説する。引き出し屋は、数百万~1000万円を超える高額な費用と引き換えに支援を行うが、引きこもりの人を家から無理矢理連れ出し、知識のない人間が指導、団体によっては暴力が振るわれることもあるなど問題を抱えているケースが多いという。

 メインで書かれているのは、引きこもりの40代男性を抱える家族の話だ。母親は、行政機関や病院などに相談したものの、男性の引きこもりは改善されず、最後の望みとして引き出し屋に依頼。高額な料金を払うために、自宅を売却した。だが、迎えた結末は最悪で、読後は胸を締め付けられた。

 そのほかにも、行政の現状や、引きこもり当事者の声など、さまざまな角度から引きこもりを取り巻く現状が書かれており、いろいろと考えさせられる一冊だ。(帆)
 


『ブラック支援 狙われるひきこもり』
高橋 淳 著
KADOKAWA 刊 1034円(税込)
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