14億人社会を生き抜く図太さ
3月、出張でインドを訪れた。道路は常にクラクションが鳴り響き本当にうるさい。初訪問の感想を一言にまとめると、「パワーにあふれたカオスな国」という印象だった。
本書は駐在員として首都デリーで暮らした著者が、現地に住む生粋のインド人「インド民」と対峙し、その生態を分析した内容だ。世界最大の人口14億人を抱えるインドは、上位1%が富の40%を所有する超格差社会。そこで生き抜くためにインド民はひたすら自分の幸せを優先し、自己中心的な合理主義を貫く。完璧を求めずまず動く「DO文化」、自信を演出する「ハッタリ」、失敗を過度に自責しないメンタル術などだ。
社会的な背景からインド民の行動の理由を分析し、彼らなりの生き方を独自に解釈した著者は、その過程で日本人が考えすぎ、悩みすぎであると気が付いた。インド民の思考はビジネスや日常で過剰なストレスを減らし、スピードと柔軟性を高める有効な手段だと考察し、良い部分だけを日本人の良さの中に取り込んでいきましょう、と呼び掛けている。インド的マインドを少し取り入れ、人生を自分のために生きようというメッセージは、心を軽くしてくれる気がした。インドに行ったことがある人もない人も楽しめる1冊だ。(緑)
『インド人は悩まない「 考えすぎ」から解放される究極の合理思考』
インド麦茶 著
ダイヤモンド社 刊 1727円(税込)