自分が生きたい時間とは何か
記者と締め切りは切り離せない関係だ。ただ、目安となる期限はあるが、最終的に紙面に載せられるデッドラインさえ死守すれば、多少遅れてもなんとかなる(あちらこちらに迷惑をかけたり、叱られたりする場合もあるが)。
おそらく、世の中の締め切りとは、大概こういうものだろう。絶対に守らなければならない締め切りとは、もはや「締め切り」という言葉では表現しきれない、別の存在である。
とはいえ、この緩やかな意味での締め切りも守れるに越したことはない。目安のような期限でも定めている理由はちゃんとあるからだ。
人が締め切りを守れない理由について、著者は「〈締め切りの時間〉と私たちが〈生きている時間〉がずれるから」とし、その上で、生きている時間を優先させながら、締め切りとどう向き合っていくかを哲学的に掘り下げている。資本や社会が押し付ける時間に絡め取られず、自分が真に生きたい時間をいかにつくりだせるか。その思考プロセスは本書を参照してほしい。
ただ、本書を読み終わっても、すぐに締め切りを守れるようになるとは限らない。なぜなら、今、この原稿は期限を大幅に超過しているのである。(無)
『なぜ人は締め切りを守れないのか』
難波優輝 著
堀之内出版 刊 1980円(税込)