陰謀論ウォッチャーが警鐘を鳴らす
「世界を支配している闇の勢力がいる」「コロナ禍は計画されたパンデミックだった」など、愚にも付かないデマを信じる人がいて、ときに大きな政治運動につながるメカニズムを7人の“陰謀論ウォッチャー”がとりまとめたのが本書だ。
この手の陰謀論の恐ろしいところは、デマに耐性のない人がある日、コロっと騙されてしまう点にある。「コロナはただの風邪」「ワクチンは毒」といった反ワクチンデマを聞いた一般人が、「そういえばインフルエンザのワクチンはまれに副反応があり…」と、過去の曖昧な記憶と重なって「一理あるな」と陰謀論に片足を突っ込んでしまう。
右派政党の「日本人ファースト」というスローガンを聞いて、「都知事の小池百合子氏が提唱した『都民ファースト』と響きが似ているし、国内でも外国人が増えていると聞くし、日本人を優先するのは当たり前では?」と思った瞬間、行き過ぎた排外主義に半分同調している可能性がありはしないか。
本書では、日常生活やSNSにいかに多くの陰謀論や排外主義があふれているのかを克明にレポートし、広く社会に向けて警鐘を鳴らしている。「気が付いたら陰謀論に加担し、過度な排外主義者になっていた」とならないようにしたい。(寶)
『陰謀論と排外主義 ~分断社会を読み解く7つの視点~』
藤倉善郎 その他 著
扶桑社 刊 1100円(税込)