企業と学生に最適な仕組み
競争過多や、企業と個人のミスマッチ、多様な人材が育ちにくい環境など、新卒一括採用がさまざまな弊害を引き起こしているという「誤解」を解く試みを繰り広げている。
バブル崩壊後の1990年代から2000年代にかけての就職氷河期、08年のリーマンショックと、学生は就職活動で厳しい立場にあった。20年以降のコロナ禍では採用プロセスに変化が見られた。一括採用はそのたびに批判や見直しが叫ばれたものの、大学の支援強化などを経て存続してきた。廃止や見直しは失業率上昇や学生の負担増などのリスクがあると筆者は指摘。一括採用によって多様性が失われているといった見方に対しても、同時期に同じように就活することで、学生はむしろ個性を模索し、アピールしていると反論する。
終身雇用がかたちを変え、転職が当たり前になっているとの意味で、新卒の就職先は昔ほど重要ではなくなっている。一方で女性の社会進出やワークライフバランスなど、職場環境の物差しは多様化している。現在は人手不足による売り手市場も重なり、企業側に厳しい状況だ。一括採用の是非を語るには、企業と学生双方にとって最適な仕組みはどのようなものか、という観点が欠かせない。(潤)
『日本の就活 新卒一括採用は「悪」なのか』
常見 陽平 著
岩波書店 刊 990円(税込)