店頭流通

ラオックスの新エンタテイメント店 「アソビットシティ」オープン 東京・秋葉原、パソコンの街が変貌

2002/10/21 18:45

週刊BCN 2002年10月21日vol.962掲載

 10月10日、ラオックスがゲームソフトやホビー製品などを集めた新店舗「ASOBITCITY(アソビットシティ)」をオープンした。今年5月末までT・ZONE.本店があったミナミ無線電機の店舗全館をリニューアル。5000平方メートルのスペースをもつこの店舗は、東京・秋葉原地区で最大級であるとともに、エンタテインメント専門館として日本最大規模となる。1990年代、パソコンの街だった秋葉原だが、大型エンタテインメント店舗の登場でどう変化していこうとしているのか。(三浦優子●取材/文)

全フロアがエンタテインメント

 「初日のお客さんの入りはどの程度だったのか?」――。電気街に本社を置くある大手販売店幹部は、アソビットシティの動向を注視している。「最近はエンタテインメント系商品の人気が高い。当社としても、その動向は注意深く見守る必要がある」

 この幹部に限らず、これまでパソコンを積極的に販売してきた店舗が、パソコンの販売にかつての勢いがなくなってきたこともあり、新しい商材としてエンタテインメント商品の動向を真剣に検討し始めた。

 ラオックスとしても、90年にザ・コンピュータ館をオープンし、大型パソコン専門店の先駆者となったのと同様に、アソビットシティを全国のエンタテインメント専門店の先駆けとしてアピールしたい狙いがあるのだろう、かなり力の入った新店舗となった。

 中央通り沿いにあったゲーム館を吸収したこともあって、1階はゲーム専用機とソフト、2階にはDVD・CDソフト、3階はゲーム攻略本とゲーム雑誌、4階は玩具とバラエティ雑貨、5階はプラモデルやラジコンなどのホビー関連商品、6階はパソコンゲームとパソコン周辺機器、7階はアダルトソフト、アダルト書籍、8階はイベントホールとなっている。

 全フロアともに完全にリニューアルし、T・ZONE.ミナミとは全く趣の異なる店舗となった。 波木井薫店長は、「ゲーム館時代はコアなゲームユーザーが顧客層で、年齢でいえば中学生から30歳代が多かった。アソビットシティは、上下に10歳ずつターゲット年齢を拡大し、5歳から50歳を過ぎたユーザーが来店してもらえる店としたい。男女比も、3割を女性にしたい」と語る。

 周囲にあるエンタテインメント店が20歳代、30歳代の男性マニアユーザーをターゲットとしているのに対し、エンタテインメント店としては偏りのない顧客層獲得を狙う。

開店10分で2000人入館

 オープン当日は、抽選で1-5割の値引きが可能となる割引券を限定1000人に配布したこともあって、開店から10分間で2000人が入館する順調な滑り出しとなった。 だが、開店前に並んだ熱心な顧客は、平日だったこともあって20歳代、30歳代の男性が圧倒的に多く、女性の割合は1%程度に過ぎなかった。目標である女性3割、幅広い年齢層の顧客を獲得していくためには、取り扱い商品の増強、告知の徹底が必要となりそうだ。

 売上目標は100億円と、大型コンピュータ専門店としては決して高くはない。しかし、ゲーム館時代の粗利率10%を13-14%にまで高める計画であり、パソコン本体の粗利が「良くて7%程度」であるのに比べれば、格段に高い粗利率となる。

 パソコン専門店に比べ、エンタテインメント専門店は、「売り上げではなく、利益を追求する」企業向きの収益構造となる。パソコン販売が不振の今、多くの販売店がアソビットシティに注目する理由もここにあるのではないか。

 アソビットシティのビジネスが成功すれば、大阪・日本橋、名古屋・大須といった他の電気街でも大型エンタテインメント館が急増することは間違いない。 「脱・パソコン」を目指す店舗にとって、アソビットシティの動向は当分の間、目が離せそうにない。
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