店頭流通

タブレットPC登場から半年

2003/05/12 16:51

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 昨年10月に開催された「WPC EXPO 2002」。一般消費者向けの最大のデジタル総合展でひと際注目を集め、主役となったのは、紛れもなくタブレットPCだった。パソコン市場の低迷が続き、「例年よりも盛り上がりに欠けた」との声が多かった会場内で、タブレットPCに群がる人混みに「パソコン市場の起爆剤になるのでは」と、期待を抱く業界関係者も少なくなかった(木村剛士●取材/文)

メリットの訴求が必要

 メーカー各社も競って、名乗りをあげた。昨年11月上旬時点で発売を表明したのは計9社。日本アイ・ビー・エム(日本IBM)以外の主要メーカー各社は、独自技術を生かしたそれぞれの形で、販売を随時開始した。発売から約半年経った今、タブレットPCの売れ行きは法人市場では順調に推移しているというが、一般消費者市場では、あの人混みとは正反対に厳しいのが現状のようだ。富士通、NECでは、「一般消費者向けビジネスはまだ立ち上がっていない。法人展開が今の主軸」と口を揃える。

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)では、一般消費者向けのビジネス展開は、自社ウェブサイトと電話受注による直販のみで、店頭展開は行っておらず、法人市場重視の戦略を発売当初から打ち出していた。日本HPの甲斐博一・パーソナルシステムズ事業統括eCommerce営業本部インターネットマーケティング部マネージャは、「コストと出荷見通しを考えたら、店頭での展開には踏み切れなかった。現時点での売れ行きは予想以上に悪く、店頭に出なかったのは正解だった」と打ち明ける。BCNランキングの4月の月次データによると、パソコンの機種別データでは、タブレットPCの最高順位は198位という厳しい結果も出ている。

 「半年で結果が出るはずがない」、「発売から1-2年経った頃が勝負」。こうメーカー各社が主張するのも分かるが、あまりにも厳しい状況だ。富士通の芝本隆政・パーソナルマーケティング統括部クライアントPC推進部担当課長は、「タブレットPCは技術的に非常に優れた魅力ある商品。しかし、一般消費者にそのメリットを伝えていき、購入意欲を掻き立てるための体制作りができていない」と、現状を語る。しかし一方で、「タブレットPC関連のイベントは満杯になる」(日本HP)、「店頭でのプロモーション活動は評判が良い」(富士通)などの声を聞くと、購入には結びついていないのかもしれないが、一般消費者の関心が薄いとは思えない。

 無線LANの普及、モバイル向けCPUの進化、パソコンの軽量化など、モバイル環境の土壌は飛躍的に成長してきた。今後のパソコン市場で、モバイル関連製品は確実に需要が見込める分野だ。タブレットPCは絶好の商材であるといえるのでないか。「自社だけで頑張ってもどうにもならない。マイクロソフトも含め、参入しているメーカー全体で盛り上げることが、新しい商材の普及には必要だ」と、あるメーカーのタブレットPC担当者は洩らす。今は売れない状況でも将来に期待がもてるような、タブレットPC参入組全体の取り組みと提案が欲しい。消費者もそれを待ち望んでいるのではないのだろうか。
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