米Nutanix(ニュータニックス)のビジネスが好調だ。米Broadcom(ブロードコム)による買収後に値上げされたVMware製品のリプレース先として注目が集まる中、同社が強みとしてきたHCI(ハイパーコンバージドインフラ)の提供にとどまらない、柔軟なITインフラを構築できる特徴にも光が当たっている。一方で、Nutanix製品を扱える技術者が国内で少ない点がビジネス拡大のボトルネックになっており、伴走支援サービスを展開するパートナーの役割はますます重要になっている。
(取材・文/大畑直悠)
米Nutanix
移行の受け皿にとどまらない
Nutanix製品への期待を追い風に、日本市場でのビジネス拡大を続けている。成長を後押しする最大の要因は、VMwareユーザーから移行先として選ばれていることだ。パートナー経由での販売も成長しており、米国本社でアジア太平洋地域おび日本(APJ)を担当するジェイ・トゥセ・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーは「価格設定やパッケージ内容の変更で混乱が生まれた中、(取り扱う仮想化基盤のメインを)Nutanix製品に切り替えたパートナーもいる」と説明する。
米Nutanix
ジェイ・トゥセ バイスプレジデント
一方で、トゥセ・バイスプレジデントは「移行の受け皿になっているのは事実だが、それは一側面にすぎない」とコメント。VMwareの代替となる選択肢であることだけが成長の理由ではないと強調する。
同社はここ数年、統合ITインフラ基盤「Nutanix Cloud Infrastructure(NCI)」を、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドクラウドといった環境を問わずにワークロードを動かせる基盤として発展させており、オンプレミスと同じNutanix環境をパブリッククラウドでも展開可能にする「Nutanix Cloud Clusters」や、コンテナ管理基盤「Nutanix Kubernetes Platform」、生成AIモデルをさまざまな環境にデプロイ・運用できる「Nutanix Enterprise AI」といったラインアップをそろえている。顧客のビジネス状況に合わせて将来的にITインフラを変えた場合でも、アプリケーションの継続的な運用を可能としている。
2025年12月には、米Everpure(エバーピュア、旧ピュア・ストレージ)との統合ソリューションを発表しており、専用のストレージ・ハードウェアを使用する三層構成のインフラを求める顧客でも、Nutanix環境を活用できる点などを紹介。顧客が望むITインフラ環境に合わせて、柔軟に対応できる点が評価されている。
トゥセ・バイスプレジデントは「4、5年ほど前までは、HCIオンリーのベンダーだという認識を持たれていたが、現在はハイブリッドクラウド環境なども含めた幅広いワークロードを支援する基盤としての理解が確立されている」と訴える。
今後の販売戦略としては、クラウドネイティブアプリケーションや生成AIの活用、ITインフラのモダナイゼーションの支援などに力を入れる構えだ。また、さらなる成長を実現するためには、同社製品の認定技術者の数を増加させることが課題になると見ている。拡大する需要に対してトゥセ・バイスプレジデントは「日本の技術者の数は足りておらず、強化していく」と意気込む。
既存のパートナーに対しては、パートナープログラムの「Elevateパートナープログラム」を通して育成を支援しているほか、VMwareの技術者に対しても、Nutanix製品の知見を共有するワークショップを開催しているという。また、トゥセ・バイスプレジデントは「NCIの特徴はGUIによる直感的な操作が可能なこと」とした上で、「他社製品のユーザーに対してもパートナーが迅速に適応できる点がアドバンテージだ」と説明する。
ネットワンシステムズ
ネットワークやセキュリティーも組み合わせた提案を推進
ネットワンシステムズは、VMwareからの移行ビジネスで追い風を受ける中でも、単に製品を置き換えるだけではビジネスを差別化するのは難しいとし、セキュリティーやネットワークの知見も組み合わせたNutanix環境の提案を推進している。
ネットワンシステムズ
榎本真弓 シニアスタッフ
VMware環境からの移行ビジネスについては、移行ツール「Nutanix Move」を活用した実績を積み上げたことで、比較的容易に移行できる点を評価してNutanix製品を選択肢に入れる顧客が多いとする。榎本真弓・ビジネス開発本部応用技術部クラウドインフラチームシニアスタッフは「当社はVMwareのパートナーでもあるため、どちらの製品にも精通したエンジニアがフラットに製品を比較できる点に頼もしさを感じてもらえるだろう」と話す。加えて、Everpureなどのストレージ製品もサポート可能としたことで、これまで顧客が親しんでいたストレージの利用を継続したいという要望に応えられるようになった部分でも、移行のビジネスに弾みがつくとの考えを示す。
Nutanix製品が移行先として選ばれる要因として、スモールスタートが可能で、最小構成で導入した後も1ノードずつ無停止で拡張できることや、仮想マシン単位でファイアウォールを設置し、マイクロセグメンテーションを実現するSDN(ソフトウェア定義型ネットワーク)ソリューション「Nutanix Flow」などのセキュリティー製品が充実しているため、柔軟で安全な環境を構築できる点を挙げる。榎本シニアスタッフは「導入した後に拡張して使い続けられる将来性に期待できるメリットがある。将来まで含めた話をすると響く顧客は多い」と説明する。
ネットワンシステムズ
玉井 真 マネージャー
生成AIを動かす基盤として関心を示す顧客も多い。GPUやサーバー、ストレージ、コンテナ基盤などをパッケージングした「GPT-in-a-box」では、生成AIを活用するための要素を個別に管理する必要がなく、Nutanix製品の特徴であるシンプルなGUI操作で運用可能だ。榎本シニアスタッフは「PoC(概念検証)がしやすく、生成AI活用の入り口として最適だ」と紹介する。ネットワンシステムズでは独自LLMの開発などで生成AIに関する知見を蓄積しており、玉井真・ビジネス開発本部プロダクトマネジメント部第1チームマネージャーは「生成AIに関する取り組みは全社で進めており、この知見をビジネスにつなげられるようにしている」と説明する。
今後の販売施策としては、目下好調な公共やエンタープライズ企業向けのビジネスをさらに加速させたい考えで、提案から技術支援、導入、運用・保守までトータルに顧客を支援するサポート体制をアピールする。玉井マネージャーは「もちろん、強引に脱VMwareを言うつもりはない」としつつ、「消極的にVMwareを使い続けているような顧客に対しては、Nutanix製品はすでに実績を伴った有効な選択肢であり、安心して選べる点をアピールしたい」と話す。その上でNutanix製品に、ネットワンシステムズのコアビジネスであるネットワークやセキュリティー、クラウド環境の構築などに関する知見も組み合わせた最適なITインフラ環境を提供できる強みを訴える構えだ。
ビジネスの拡大に合わせて社内のNutanix人材の拡大にも取り組む。100人近い資格者をさらに拡充する方針で、社内向けのセミナーの開催や、実際に実機を触りながらNutanix環境を検証できる設備の充実などで、エンジニアが学習できる環境を整えている。
エフサステクノロジーズ
ワンストップのサービスが強み
NutanixのOEMパートナーであるエフサステクノロジーズは、自社で展開するx86サーバー「PRIMERGY」とNutanixの仮想化ソフトウェアを組み合わせたHCI製品「PRIMEFLEX for Nutanix Enterprise Cloud」に、提案から導入、運用まで一貫して支援するサービスを組み合わせてビジネスを伸長させている。
最近は、業種・業界や企業規模を問わずVMware製品からのリプレースが進んでいるという。VMware製品の旧ライセンス体系で永続ライセンスを購入した企業が今後リプレースを検討する期間も考慮すると、移行需要は5年ほど続くとみている。
移行支援ツールの活用で導入作業のハードルは下がるものの、導入後の安定稼働の維持に不安を感じる顧客も多い。その点で、同社が提供する支援サービスが顧客のニーズをつかんでいるとする。
エフサステクノロジーズ
松永好令本部長(右)と中村聡事業部長
同社では24時間365日、顧客をオンサイトで支援する保守体制を全国に構築している。また、Nutanix環境の事前検証を支援する「Platform Solution Lab」やアセスメントサービスによって、導入前から運用まで顧客をトータルで支援する。松永好令・サーバ&ストレージ事業本部長は、「仮想化基盤の移行が容易だとしても、顧客のSEに新しいことを覚えてもらうハードルはあり、その技術者がいなければ結局は移行が進まない。当社は、サポートを地道に提供しながら人材を増やしていくことがビジネスの伸長につながると考えている」との考えを示す。
今後の販売戦略としては、移行ビジネスの推進に加えて、これまで比較的未開拓だった中堅・中小企業への訴求を強化する方針だ。小規模用途に最適化されたNutanix製品「Nutanix Cloud Infrastructure - Edge」で、少量のVMから導入できる点を訴える。また、同社が展開する、オンプレミスのハードウェアでも機器を所有せずクラウドサービスと同様に月額払いにできるサービス「uSCALE」の提供により、初期費用を抑えた調達を可能にする。
拡大する需要に応えるための社内の人材育成にも注力する。オンプレミス環境での利用を進める顧客が多い傾向にある一方で、Nutanixが力を入れているオンプレミスとクラウド環境を柔軟に使い分けできる環境を利用したいとする顧客も徐々に増えている。中村聡・サーバ&ストレージ事業本部仮想化インフラストラクチャ事業部事業部長は「顧客の多様なニーズに応えるため、クラウドやセキュリティーといった周辺技術にも精通した“Nutanix+α”の人材育成に注力する」と意気込む。また、パートナーとの関係も重視し、幅広い販売店やSIerによる同社のOEM製品の拡販にも期待を示す。
ライセンス体系の変更を機に、仮想化市場で圧倒的なプレーヤーであったVMwareは当たり前の選択肢ではなくなりつつあり、どの仮想化製品を利用するかには顧客ごとに向き不向きが生まれている。こうした状況に関して松永本部長は「(仮想化基盤に関して)単一の製品しかないという状況は、顧客に対して何が最適かという選択肢を提示できない点では売りづらさもあった。顧客に複数の選択肢を提示できるようになった点で、Nutanixのビジネスが広がりを見せている点は非常にありがたい」と話す。