店頭流通

JEITAの2002年度国内パソコン出荷実績 1000万台を割り込む

2003/05/12 16:51

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 電子情報技術産業協会(JEITA、谷口一郎会長=三菱電機会長)が発表した2002年度(02年4月―03年3月)の国内パソコン出荷実績は、従来予測の1000万台を割り込む984万台にとどまった。「年度末の法人需要が振るわなかった上に、コンシューマ市場もよくなかった」などの理由から、3年連続の前年度割れとなった。一方、03年度は、前年度比4%増の1020万台とプラスに転じると予測している。パソコンの販売量を増やすために、「有望な市場を開拓するなど、JEITAとして販促につながる活動を行っていく」としている。(三浦優子)

3年連続の前年割れに

■厳しかった02年度第4四半期

 02年度の国内パソコン出荷実績は、前年度比で8%減。01年度が同12%減と大幅に落ち込んだのに比べれば、03年度は同8%減と、「落ち込み幅は減っている」という。しかし、マイナス成長が続いていることには変わりはない。

 しかも、第3四半期(02年10-12月)の発表時の予測である1000万台にも出荷は届かなかった。

 JEITAでは、「第3四半期時点では02年度通期の国内出荷台数は1000万台と予測していたが、結果はそれを下回った。第4四半期(03年1-3月)に法人需要がもう少し善戦すると期待していたが、それが伸び悩んだ。コンシューマもよくない。年度別の落ち込み幅ではよくなってはいるものの、絶対数では減少し、マイナス成長となってしまった。IT投資促進税制の前倒し適用を見込んだ需要にも期待したが、第4四半期についてはほとんど効果がなかった」(篠崎雅継・PC事業委員長)と説明する。

 02年度第4四半期の実績は、総出荷台数が前年同期比7%減の305万台、金額が同12%減の4681億円、うち国内は出荷台数が同6%減の290万4000台、金額が同12%減の4471億円と厳しい。IT投資促進税制の効果もまだ出ていないようだ。

 JEITAでは、「IT投資促進税制は国会を通る前だったこともあり、メーカー各社のアピールも十分ではなかった。また、パソコンを含めたIT関連商品がどこまで対象になるのかわかりにくい部分があった」ことなどをあげ、今後はPRの徹底などを行っていくという。

■03年度の国内出荷、1020万台と予測

 果たして、パソコン市場の成長はこのまま止まってしまうのだろうか?

 この疑問を否定するように、JEITAでは03年度の国内出荷台数を前年度比4%増の1020万台とプラスに転じると予測している。

 「正直なところ、あまり芳しい経済環境だとはいえない。株安、イラク戦争の影響、新型肺炎SARSによる中国生産へのマイナス影響など、厳しい要因はある。しかし、世界的にはパソコン出荷がプラスに転じると言われている。悩んだ結果、この数字にした」(篠崎委員長)。

 プラス成長になるための需要拡大のキーワードとして、(1)ブロードバンド/モバイル環境の普及、(2)IT投資促進減税、(3)大・中規模企業での更新需要の拡大と用途に合わせた複数台利用の拡大、(4)コンシューマ市場におけるオーディオビジュアル用途の利用拡大、(5)アクティブシニア、小中学生など、有望潜在顧客層の開拓――をJEITAではあげている。

 具体的には、有望市場の開拓をにらみ、パソコンの未保有者に対して、「パソコン購買動向調査」を実施した。

 これは、昨年12月、自宅にパソコンがない18歳から79歳の男女520人を対象に、「パソコンの利用経験」、「保有しない理由」などを調査している。

 その結果、自宅にはパソコンをもっていないものの、「職場など自宅以外で使用中」と答えた人が34.2%にのぼった。「使用経験なし」も43.5%と高い数字だが、パソコンに接触する機会は着実に増加していることをうかがわせる。

 それにも関わらず、パソコンを自宅で保有しない理由では、「パソコンが高価・資金不足」が46.2%でトップになっている。

 次に、「使いこなせる自信なし」が38.1%、「パソコンの使い方がわからない」が35.6%、「他に優先したいお金の使途あり」が34.8%と続く。

■未保有者の新規需要に期待

 「今後のパソコン購入予定」について「しばらくは購入するつもりはない」と答えた人の理由では、「価格」、「使いにくさ」などが多い。

 JEITAでは、「パソコンの単価は徐々に下がってきている」として、ユーザーが望む「もっと安くなる」に近づいていると説明する。

 ノートパソコンについては、「第1四半期(02年4-6月)には液晶モニタやメモリの値上がりなどにより、ノートの単価が上がったものの、その後は四半期ごとに下がってきた」という。

 ノートパソコンの平均単価(JEITA調べ、以下同じ)は第1四半期の18万3000円が第4四半期には15万9000円にまで下がっている。

 デスクトップについては、「四半期ごとに乱高下を繰り返した」とし、第1四半期の16万8000円が、第2四半期には15万2000円まで下落。第3四半期には16万5000円まで上昇したものの、第4四半期には14万8000円と再び下落している。

 平均単価については低下傾向となっているのは間違いない。 さらに、「使いこなす自信がない、使い方がわからないという人に対しては、これを解いてやる努力がメーカーに必要となってくるだろう。また、家庭でのパソコンの必要性を高めていくことが重要だ」(PC委員会・長野祐三氏)と指摘する。

 パソコン未保有者にパソコンの必要性をどれだけ感じてもらえることができるか。この点に、03年度の国内パソコン出荷が再び1000万台の大台を上回れるかがかかっているといえそうだ。
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