店頭流通

ソフト流通 新規チャネル開拓進む 付加価値戦略が本格化

2003/12/01 16:51

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

 ソフト流通に新しい動きが出てきた。パッケージベンダーが相次いでパソコン販売店以外への新規チャネルの開拓を強化したことで、既存ソフト流通網の“勢力外”での新しいソフト流通量が急拡大している。これに対して、ソフト流通大手のソフトバンクBBでは、自前のADSL網を活用した新しいソフト流通形態である「ユーティリティコンピューティング戦略」を打ち出している。

 新しいソフト流通ビジネスを立ち上げる気か?――。既存大手ソフト流通の幹部は、ソフトパッケージベンダーであるソースネクストやイーフロンティアの動きを警戒する。

 ソースネクストは、今年4月から9月までに、自社製品の取り扱い店舗数を2200店舗から1万店に増やした。11月中旬時点での店舗数は、さらに増えて全国1万7000店となり、今年度末(2004年3月期)には2万5000店に達する見通しだ。増加分の大半は、書店やコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどの異業種の新規チャネルが占める。

 今年度通期では、パソコン販売店や家電量販店など既存チャネルが売上全体の7割程度を占めるが、来年度(05年3月期)は、「売上全体の半分以上が異業種の新規チャネルでの販売が占める」(松田憲幸・ソースネクスト社長)と予測する。

 イーフロンティアも、書店などで売れやすい価格帯である1980円のパッケージソフト「eプライス」の品揃えを強化。書籍流通を手がける日教販と提携して、本格的な新規チャネルの開拓にこの10月から着手した。

 同社では来年度(05年3月期)、eプライスシリーズの販売目標を100万本とし、このうち「新規チャネルの販売比率は、半分以上を占める」(清水勝之・イーフロンティア専務取締役)と予測する。

 ソースネクストやイーフロンティアの最大の強みはマーケティング力にある。ソフト開発ベンダー関係者は、「既存のソフト流通に製品を流しても、販売本数のコミット(確約)や販売力などに疑問をもつことがある。それに対して、新規チャネル開拓に積極的なソースネクストなどは、製品や価格に対する厳しい注文がある一方で、販売には積極的だ」という声が聞かれる。

 ソースネクストの松田社長は、「われわれは物流網を自前で持っているわけではなく、流通事業者ではない」としながらも、「既存の流通事業者と当社との違いは、積極的な価格戦略や新規チャネルの開拓、有名タレントを起用した広告宣伝、ソフト売り場づくり、商材開拓などの部分。これら付加価値を流通ビジネスに含めるのなら、われわれは新タイプの流通事業者かもしれない」と話す。

 現に、日本IBMやサン・マイクロシステムズなどの大手ベンダーも、ソースネクストの販売力と付加価値流通に目をつけて、自社商品の供給を始めている。イーフロンティアにも、ソフト開発会社から同様の売り込みが急増しており、「どうマーケティングしたら売れるのか、持ち込まれる商材を日々精査している」(清水専務)と話す。

 一方、既存の大手ソフト流通事業者であるソフトバンクBBは、ユーティリティコンピューティングという新しい基軸を打ち出している。これは、同社が全国に展開する自前のADSL網を活用し、必要なときに、必要なソフトウェアを、ストリーミング方式で呼び出す仕組みである。「既存のパッケージ流通とは異なり、インストールする手間もなく、欲しいときに欲しいソフトが自由に使える究極のソフト流通」(孫正義社長)と話す。

 同じくソフト流通大手、コンピュータウェーブの辻本和孝社長は、「数年後には、ソフト流通業界全体で、コンビニや書店など異業種チャネルとインターネットチャネルとを合わせて、全体の半分程度までに拡大するのではないか」と予測する。

 パソコン販売店など既存チャネルにおける「ソフト流通の衰退基調」が続くなか、これを打開する新しいソフト流通の在り方が問われている。
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