秋葉原物語

<秋葉原物語>[第1部 ポテンシャル]13.新ビジネスモデル創出へ

2005/01/31 16:51

週刊BCN 2005年01月31日vol.1074掲載

 JR秋葉原駅前の都市再開発により、電気街を中心に街全体が発展するポテンシャルは高い。東京都や千代田区など行政では、「秋葉原クロスフィールド」の完成で世界の最先端を行くIT拠点となり、国内外問わずに多くのユーザーが訪れることになるとみている。

 パソコンおよび関連機器のメーカー、家電量販店やパソコン専門店では、「集客が上がることは確か」という点で一致し、また期待もしている。「秋葉原電気街でのキャンペーンをさらに増やしていく」と話す大手メーカーの関係者もいるほどだ。再開発事業が電気街の活性化に一段とつながることは間違いないだろう。

 ここで問題になってくるのは、電気街の各ショップが変化に対応していけるかどうかだ。ある大手パソコンメーカーの幹部は、「秋葉原電気街自体がさまざまな街に変貌するのは良いこと。しかし、すべてのショップではないにしろ、ビジネスモデルを変えようとしないパソコン専門店や家電量販店が多い」と指摘する。今後は、「駅前を中心に情報タウンへと変わっていくため、ただ指をくわえて見ているだけでは時代の流れに取り残されてしまう」とみている。

 電気街の組立パソコン用パーツ専門店の関係者は、「街全体の集客が上がっても、うちに来店するとは限らない。秋葉原の既存ユーザーからも新規来訪者からも魅力がある店舗だと思われなければ淘汰される危険性もある」。募る危機感から、独自のビジネスモデル構築を模索しているショップもある。

 大手パソコン関連機器メーカーの幹部は、「電気街の魅力は、新しいテイストが加わっても違和感がなく、さらに味わい深い街になっていくこと」という。これまでも、ラジオからテレビへ、オーディオからパソコンへと主役が代わり、薄型テレビやDVDレコーダーなどデジタル家電も登場した。さらに、フィギュアやコスプレ喫茶などエンターテインメントの街という側面も出てきた。

 パーツショップなど小さな店が数多く集まっているのも、電気街の魅力の1つになる。ショップにとっては密集していることが集客のメリットになっている。これに加え、各ショップが新しいビジネスモデルを構築することが収益を伸ばし、魅力ある街としてユーザーを増やすためにも必要になってくる。

 今年3月には、秋葉原クロスフィールドの「秋葉原ダイビル」がオープンする。確実に変化していくなかで、独自のモデルを創出することが新しい時代を切り開くことになる。(佐相彰彦)
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